W.T.ホートン・タロット selected and composed by Koretaka "roppo" Eguchi from the drawings of W.T.Horton まえがき ウィリアム・トマス・ホートン(1864-1919)が残した線画とイラストを選んでタロット化するという作業は恐ろしいほど簡単である。まるでイラストたちが自ら「わたしは魔術師だ」「わたしは節制です」と叫んでいるに等しい。ほとんどの作品は一定の長方形に収まっているため、無理なコラージュの必要もない。小生がホートン・タロットの製作に要した時間は4時間である。問題はホートンの作品をそこそこ集めるのに要した時間が20年であったことだ。 ホートンは事実上忘れ去られた存在といってよい。生前に作品が認められた形跡はなく、自著と呼べるものは2冊、あとは他者の書物の挿絵、雑誌への寄稿等が主な芸術活動であった。没後に友人が出した遺作集が一冊、イエイツとの交友関係を調べた研究書が一冊と、お寒い限り。それがホートンの現実的な評価と言ってしまえば身もふたもないが、事情はまあそのとおりなのである。ホートン作品の収集にえらく時間がかかってしまったのもご理解いただけよう。 そのホートンの作品をタロット化することにいかなる意義を認めるのか。それは出来上がったカードそのものに語ってもらうのが一番であろう。選者としての小生はただ自信をもってこれはいいとお勧めするばかりであるし、今となってはタロットこそが本来のホートン・イラストの正しい姿ではなかったのかとまで考えている。 各カードの解説にあたってはいわゆる占術上の正位置/逆位置の意味には触れず、ホートンの人生や作品、思想等を思いつくままに記していきたく思う。 |
|