Death 死

At peace, at rest,
Upon Fate's breast,
At last -- 'tis best.

平安に、安らかに、
運命の胸に抱かれ、
ついに −− 最良の時に至る

 『魂の道』よりの採用である。付属の詩句は明らかに死を意味しており、またこの絵の位置が最終ページの一つ前、ホートン・タロットでいえば「愚者」の直前というポジショニングがよかったのである。実をいえばホートンの処女作『イメージの書』にタイトルもそのものずばり「死の天使」という作品が収録されているのだが、こちらはどうも釈然としない。ホートンによる骸骨、大鎌といった伝統的死神図が発見されるまで、この絵をもって「死」となすしかない、というのが小生の結論である。

 図像的には見たとおり、としかいいようがない。運命は炎の剣で人を刈り取り、安息をもたらすのである。

 前世にて別れた相対の魂と現世にてめぐりあい、因果を尽くして彼岸に戻る。それがホートンの本懐であったとしても、よもや実現しようとは本人ですら予想していなかったのではないか。現身のローザ・ミスティカ、エイミー・オードリー・ロックはホートンと三年間同じ屋根の下で暮らし、突然この世を去ってしまう。しかし彼女の魂は部分的に現世にとどまり、ホートンの影のなかでいきづき、画家を彼岸へと誘う。友人が現世への執着を失うさまを目にしたイエイツは、このままでは危ないとばかりに女性的係留役というかなんというか、当時絶世の美少女として名高いイゾルテ・ゴンをホートンに紹介する。しかしかの美貌もホートンには粗野な肉塊にしか見えなかったようである。結局ホートンは恋人の死後、5年とたたずに彼岸へと旅立っていく。

 残されたイエイツはプランシェットを手に友人からの連絡を待ち、また『ヴィジョン』にホートンの名を記して感慨に耽るのであった。



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