The Hierophant 神官

Eternally the Mystic Rose
Petal on petal doth disclose,
Engraved with knowledge of all time
Of every age and thought and clime.
'Tis Circumstance that holds the key
Unlocks the door, the soul sets free.
The Spirit rules the Circumstance
And all is Law and nought is chance.

神秘の薔薇は果てることなく
花弁を一枚ずつ開いてゆく。
其処に刻まれたるは万世の知識、
あらゆる時代と思想と風潮なり。
鍵を持ち、扉を開いて
魂を解き放つは「状況」なり。
霊は「状況」を司るものなり。
万事は法則にして偶然にあらず。


 ホートン・タロットの「神官」は見ての通りのエジプト・モードである。右手に薔薇十字、背後にピラミッド、さらに左手を真ん前に突き出しているため、上から見ると両腕で直角を形成する配置となる。すなわち矩形であり、また薔薇の円を描くための道具=コンパスを思えば、背後のピラミッドと合わせてこれすなわちメイソニック・シンボルと見なしてもよい。フリーメイソンリーの起源をソロモン神殿以前のエジプシャン・ピラミッドに求めるという発想はそう珍しいものではない。

 本来のタロットでいえばこの札は「教皇」であり、ゆえに教皇庁のシンボルである「鍵」が描き込まれる。ホートンの解説文に「鍵」が登場するのは偶然ではなかろう。宇宙神秘の知識を得る「状況」すなわちこれ秘儀参入である。そのタイミングはすべて「霊」の司るところであり、人知の及ばぬ領域である。断崖の突端より神官に訴える旅人は秘儀を得られるか、あるいは転落して遥か下に渦巻くエレメントに飲み込まれるか。なんらかの危機ないし苦難を経なければ秘儀参入は達成されないのである。それはバンジー・ジャンプであったり、火渡りであったり、目隠しされて短剣を突きつけられる状況であったりする。

 このカードはまさに「神官」そのもの。差し替えは考えられない。



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