Mathers, S[amuel] L[iddell] MacGregor
S.L.マグレガー・マサース
(1854ー1918)

魔法名 'S Rioghail Mo Dhream (5=6,G. D.)
Deo Duce Comite Ferro (7=4,G. D.)
"God as my guide, my sword as my companion"
別名  Comte de Granstrae (グランストリー伯爵)


☆ 「黄金の夜明け」団の創立者のひとりにして儀式魔術の天才。ウェストコットの下で隠秘学の基礎を学び、後に大英図書館でさらに研究を進める。「黄金の夜明け」団創立時には儀式の編集に携わり、1892年にはセカンド・オーダーの単独責任者に出世、以後数々の魔術を考案した。しかし、生来の血統妄想や過激な政治信条が災いして団員に嫌われ、1900年には団から追放された。マサースは多数の奥義書の翻訳者としても有名である。

略歴


1854年1月8日、ロンドンのド・ボーヴォアロードにて出生。父ウィリアムはサラリーマン、母メアリー・アンは専業主婦。
1863年前後、父の死去にともない、ボーンマス地区に転居。寡婦の母とともに赤貧を洗う。
1870年、ベドフォード・グラマースクール卒業。不動産屋の事務員となる。
1877年10月4日、ボーンマス地区でフリーメイソンリーに入会する。この時期から隠秘学研究を開始する。
1878年、マスター・メイソンに昇進。この頃から「グランストリー伯爵」を名乗り始める。
1882年、「英国薔薇十字協会」に入会、ウェストコット、ウッドマン等と知り合う。
1885年1月、母死去。
     2月、ロンドンに出て、ウェストコット邸の居候を決め込む。この頃にアンナ・キングスフォードと出会い、影響を受ける。
1886年6月、キングスフォードの「ヘルメス協会」に於いてカバラに関する講演を行う。同協会の名誉会員に迎えられる。
1888年3月、ウェストコット、ウッドマンとともに「黄金の夜明け」団の創立者となる。同団の儀式構成を担当。大英図書館で執念の文献踏査を行う。
1890年6月16日、ミナ・ベルグソンと結婚。博物館の管理人として就職、ウェストコット邸を出てフォレスト・ヒルに引っ越す。
1891年初頭、博物館を解雇される。以降、マサースは定職を持たずに生涯を送る。
    7月、妻と渡仏。この際に《秘密の首領》と接触して5=6儀式を授かったという。
   秋、帰国後、「黄金の夜明け」団セカンド・オーダーの内部機構改革に着手。それまでの隠秘学同好会を魔術結社に仕上げる。
1892年5月24日、パリに移住。《秘密の首領》に命じられたためだというが真相は謎。
1894年1月、パリにアハトゥールテンプルを開設。
   10月あたりから、ロンドン本部との関係が悪化し始める。
1895年、団幹部エドワード・ベリッジの処分をめぐってアニー・ホーニマンと対立。
1896年12月、ついにホーニマンを団より除名する。生活費をホーニマンから貰っていたマサースは経済的に破綻する。
1897年3月、ウェストコット退団。マサースの独裁政権が確立する。
1900年4月19日、「黄金の夜明け」団より追放される。→備考参照。
   5月、ともに追放されたベリッジ等とA.O.(Alpha & Omega)を結成する。
1910年3月、クロウリーの『春秋分点』刊行を阻止するため裁判所に訴えるが却下される。この時期、約2年間ほどロンドンに住む。
1911年4月、G.C.ジョーンズ対『ルッキング・グラス』紙裁判に於いて、被告側の証人として法廷に登場、満座の笑いものとなる。
1914ー17年、フランスのために外人部隊志願兵事務局を開設する。
1918年11月21日、悪性の流行性感冒のためパリにて死去。

※備考マサースが追放された直接の原因は、当時団内で評判の悪かったクロウリーを独断で5=6に昇進させたことに端を発する。ロンドンの幹部会がこの昇進を認めなかったため、マサースはロンドン幹部会を反乱軍とみなして、クロウリーに全権を与えてロンドンに送り込んだ。クロウリーがロンドンの団専用室を占拠するという事態に接して、完全に頭に来た幹部会はマサースをクロウリーもろとも追放したのである。


主要著作 The Book of Sacred Magic of Abra-Melin the Mage, Watkins, London, 1898.: Causeway, New York, 1974.
The Grimoire of Armadel, RKP, London, 1980.
The Kabbalah Unveiled, George Redway, London, 1887.: RKP, London, 1970.
The Key of Solomon the King, George Redway, London, 1888.: RKP, London, 1972.

参考文献 Colquehoun, Ithell:Sword of Wisdom, Neville Spearman, London, 1975.
Gilbert, R.A.(ed.):The Sorcerer and his Apprentice, Aquarian, Wellingborough, Northamptonshire, 1983.
Howe, Ellic:The Magicians of the Golden Dawn, RKP, London, 1972.


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