Fortune, Dion Mrs Penry Evans (nee, Violet Mary Firth) ダイアン・フォーチュン (1891ー1946) 魔法名 Deo Non Fortuna (A.O.) ☆ 20世紀有数の魔術師にして魔術作家。「内光協会」の創立者。魔術界に心理学を持ち込んだ張本人。 1891年、ウェールズに出生。幼少時より霊媒的素質に恵まれており、神秘の世界に興味を示したという。少女時代はクリスチャン・サイエンスと詩作に染まる日々を送る。 1910年頃、どこぞの私立学校の補助教員となるが、ここで校長と喧嘩を引き起こして神経衰弱を患うことになる。フォーチュンの説によれば、この校長はオカルト的攻撃を仕掛けたのだという。 約一年の療養生活の後、様々なオカルト組織にかかわりつつ、ロンドン大学病院ではフロイト心理学を学ぶ。 フォーチュンの「黄金の夜明け」系魔術とのかかわりは1919年頃、ブロディ−イネス率いるA.O.に参入した時をもって始まる。一年後にモイナ・マサースが首領をつとめる別のA.O.に移籍して、いよいよ修行に励むが、二年とたたないうちにモイナとフォーチュンの関係がおかしくなっている。フォーチュンは独自の霊界通信を得て、モイナの教える体系とは異なる思想を有するようになったためだが、結果としてフォーチュンは1922年に「神智学協会キリスト教神秘主義ロッジ」を創立してA.O.と袂と分かっている。この組織は1928年に「内光協会」と改名された。 以後、フォーチュンは次々に雑誌上でオカルト関係の記事を発表するようになるが、記事の内容にモイナがクレームをつけて両者の仲は決定的にこじれている。フォーチュンの話によれば、モイナは数々の魔術的攻撃を仕掛けてきたという1。 1926年には「暁の星」系ヘルメス・ロッジに参入して「黄金の夜明け」系の血統を増加させ、本格的な魔術結社活動に移行している。 1927年、医師ペンリー・エヴァンズと結婚。以降、夫妻で会の運営にあたるが、1936年頃に離婚となっている。 1930年からフォーチュンは「内光協会」を本格的通信教育魔術機関として発足させ、厖大な著述をなしつつ日々を送る。夫の影響といわれているが、英国伝統のアーサー王伝承にものめりこみ、グラストンベリーに居を構えるなど、元来の「黄金の夜明け」系とは異なる流れにも接している。 晩年はクロウリーの影響を受け、異教と性をテーマにした小説群を発表。この時期の著作が一番高い評価を受けている。 1946年、口腔内外傷に起因する敗血症のため死去。 フォーチュンの功罪はともに魔術界に心理学を導入したことにある。潜在意識理論や集合的無意識論を用いて魔術を語ることによって一部のインテリに訴えるところはあったが、肝心の魔術体系自体が混乱してしまっている。おまけに、彼女以降の「内光協会」系魔術師の多くが三流の心理学アマチュアに近い存在となってしまった。 1. モイナが仕掛けた魔術的攻撃は『心霊的自己防衛』に詳述されている。一番有名なのはフォーチュンの事務所を襲った黒猫の大群と巨大虎猫の幻影であるが、これに類した話をクロウリーが1909年の『春秋分点』第一巻第一号に “At the Fork of the Road"と題して掲載している。これはクロウリーが実体験をもとにしたという怪奇小説であり、アラン・ベネットがモデルの魔術師が、夜中に忍んでいって、黒魔術師の住居の回りにマタタビをばらまくというセコイ嫌がらせを演じている。ゆえに、モイナもマタタビ散布という「黄金の夜明け」系の伝統的嫌がらせを行ったか、あるいはフォーチュンが一部の事情通の読者にそう思わせるように仕向けたかのいずれかであろう。もっとも、怪奇短編集『タヴナー博士の秘密』を読めばわかる通り、フォーチュンはあからさまなパクリを平気で行う人物であるから、なにも考えていないかも知れない。 |
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主要著作 | The Esoteric Philosophy of Love and Marriage, Rider, London, 1924.: Weiser, New York, 1970. Psychic Self-Defence, Rider, London, 1930.: Weiser, New York, 1976,: 『心霊的自己防衛』大島有子訳、国書刊行会、1983年。 The Esoteric Orders and Their Work, Rider, London, 1930. The Training and Work of an Initiate, Rider, London, 1930.: Weiser, New York , 1972. The Cosmic Doctrine, Rider, London, 1930.: Helios, Cheltenham, Gloucestershire, 1966.: Aquarian, Wellingborough, Northamptonshire, 1976. Sane Occultism, Rider, London, 1930.: Aquarian, London, 1967. Avalon of the Heart, Rider, London, 1935.: Aquarian, London, 1971. The Mystical Qabalah, Ernest Benn, London, 1935.:『神秘のカバラー』大沼忠弘訳、国書刊行会、昭和60年。 Practical Occultism in Daily Life, Rider, London, 1935.:Weiser, New York, 1976. Through the Gates of Death, Aquarian, London, 1968. Applied Magic, Aquarian, London, 1962. Aspects of Occultism, Aquarian, London, 1962. The Secrets of Dr. Taverner, Noel Douglas, London, 1926.: Llewellyn, St Paul, Minnesota, 1979. The Demon Lover, Noel Douglas, London, 1927.: Aquarian, London, 1971. : (abridged p.b.) Wyndham, London, 1976. The Winged Bull, William & Norgate, London, 1935.: Aquarian, London, 1971. : (abridged p.b.) Wyndham, London, 1976. The Goat Foot God, William & Norgate, London, 1935.: Aquarian, London,1971. : (abridged p.b.) Wyndham, London, 1976. The Sea Priestess, privately, London, 1938.: Aquarian, London, 1957.: (abridged p.b.) Wyndham, London, 1976. Moon Magic, Aquarian, London, 1958.: (abridged p.b.) Wyndham, London, 1976. |
参考文献 | Fielding and Collins,: The Story of Dion Fortune, Star anc Cross, 1985.:Thoth Publications, Loughborough, 1998. Richardson, Allan: Priestess, Aquarian, Wellingborough, Northamptonshire, 1987. Chapman, Janine: Quest for Dion Fortune, Samuel Weiser, York Beach, ME, 1993. Knight, Gareth: Dion Fortune and the Inner Light, Thoth Publications, Loughborough, 2000. |
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