Swedenborg, Emmanuel
エマヌエル・スウェーデンボリ
(1688-1772)

☆ スウェーデンの哲学者、科学者、神秘主義者。オカルトのあらゆる分野に影響を与える。

 1688年1月29日、ストックホルムにて出生。父親はウプサラの神学教授であり、後にスカラの司教をなっている。
 1710年、ウプサラ大学を卒業し、その後見聞をひろめるためにヨーロッパを大旅行してまわり、1715年に帰国。翌年、鉱山技師として公務員となり、以後数々の科学的、技術的研究を重ね、その功績により後に貴族に列せられている。
 1744年、突如として霊的ヴィジョンに目覚め、それまでの科学者としての生活を一切断ち切って、宗教家に転身。独特の霊視能力を用いて霊界の様相を探り、次々に著作として発表、世間の度肝を抜く。聖書の独自の解釈にも熱中し、“新教会”(俗にスウェーデンボリ教)を創立。存命中は毀誉褒貶が激しかったが、信奉者は徐々に増加し、彼の教会は現在でも存続している。
 1772年3月29日、訪問中のロンドンにて死去。
 スウェーデンボリの名声は死後も衰えることなく、今に至るまで様々な霊媒や神秘主義者が彼の霊の訪問を受けたとか、会ったとか主張している。

 魔術界に於けるスウェーデンボリの影響は余り論じられたことがないが、主として性魔術方面に顕著である。彼の唱えた天上の愛、天使への愛を拡大解釈して「両性具有神的天使への愛」となし、男と女と天使が同時に愛し合うことで「三位一体」を完成させるという思想をバルザックが小説『セラフィータ』で開陳している。これを現実に実行しようという動きを「セラフィータ・カルト」と呼称する。主にフランスで流行しているが、このカルトが中世的な「男性夢魔・女性夢魔」と紙一重なのは容易に理解されよう。これが煮詰まるとブーランのリヨン共同体にまで発展するのである。
 一方、やはり同様の発想が米国にも生じており、スウェーデンボリの影響をもろに受けたアンドリュー・ジャクソン・デーヴィスから派生したハリスの「天上の相対的天使」論、その弟子のオリファントのさらに進んだ集団結婚と瞑想的自慰その他の活動は殆ど O.T.O.の性魔術の域に達している。

 無論、スウェーデンボリ自身にここまでの意図はなかったのであるが、彼の残した体系に性魔術的発展の土壌があったのは確かであろう。


主要著作 A Treatise Concerning Heaven and Hell, And of the Wonderful Things Therein, Anthony Miltenberger, Baltimore, 1812.
Angelic Wisdom About Divine Providence, New Church Printing Society, Boston, 1840.
The New Jerusalem, and Its Heavenly Doctrine: From Things Heard Out of Heaven, To Which Is Prefixed Something Concerning the New Heaven and the New Earth, T.H.Carter and Sons, Boston, 1867.
Heaven and Hell, American Swedenborg Printing and Publishing Society, 1872.
Divine Love and Wisdom, Swedenborg Foundation, New York, 1937.
Marital Love, Its Wise delights, After Which Follows Scortatory Love, Its Insane Pleasures, Swedenborg Publishing Association, new York, 1938.
The True Chrinstian Religion, 2vols, Swedenborg Foundation, New York, 1952.
The Last Judgement, The Swedenborg Society, London, 1961.


* English translations only.

『スエデンボルグ全集』25巻、柳瀬芳意訳、静思社、1972-
参考文献


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