Regardie, Francis Israel イスラエル・リガルディー (1907-1985) 魔法名 Ad Majorem Adonai Gloriam (5=6, S.M.) ☆ 二次大戦後の「黄金の夜明け」系魔術実技理論の権威。 1907年11月17日、ロンドンのイースト・エンドにて出生。両親はユダヤ系英国人であるが、リガルディーが13歳の時に米国に移住したため、息子は米国人とみなされている。フィラデルフィアの美術学校に通っていた頃、クロウリーの著作に接し、魔術に興味を持つ。クロウリーにファンレターを出したのがきっかけで、当時クロウリーの米国代理人であったカール・ゲルマーと交遊するようになり、1928年10月、ついに渡仏してクロウリーの私設秘書となる。 リガルディーは以後4年間を大魔術師の下で過ごし、フランスから国外退去命令をくらうやら、英国には入国出来ずにブリュッセルで餓死しかけるなど、ひどい目にあっているが、秘書として働いたために、師匠の原稿や私文書の殆どに目を通すことも出来て、これが彼にとっての貴重な財産にもなった。 しかし、クロウリーと長年にわたって付き合える人物は皆無に等しく、1932年にリガルディーが発表した The Tree of Life をめぐってクロウリーとの間に辛辣な口論が起きてしまい、喧嘩別れとなっている。 クロウリーと別れた後、リガルディーはダイアン・フォーチュンと接触して、1934年に後者の紹介でブリストルに残存していた「暁の星」団系「ヘルメス・ロッジ」に参入している。ここでリガルディーはあっという間に5=6に昇進したが、同時に団の首領たちの無能ぶりにあきれはて、このままでは伝統が滅びると確信している。そこでリガルディーは、手に入る限りの団の文書をまとめて The Golden Dawn の題名のもとに出版してしまった。 リガルディーの暴露の動機は出版による団教義の保存にあったが、他の関係者の目には単なる泥棒としか映らず、これにより以後の彼の評判は毀誉褒貶の渦と化す。 その後、リガルディーは米国に帰還するが、クロウリーが彼に関する中傷怪文書を各所に送り付けたために、魔術キャリアに著しい傷を受け、さすがに嫌気がさして魔術界から引退する。 一般人に戻ったリガルディーは、生計のためにカイロプラクティス師の資格を得た後、二次大戦に従軍、戦後にカリフォルニアに落ち着いて結婚している。この間、彼はウィルヘルム・ライヒに傾倒し、カイロプラクティスにライヒ的要素を導入した新療法を考案、有能な治療士としての評判を博す。 リガルディーの魔術界カムバックはやはりクロウリーにかかわるものであり、伝記等で手厳しく取り扱われていた旧師の再評価を目的としていたが、その矢先の1969年初頭、自宅が泥棒に襲われ、貴重なクロウリー・コレクションや「黄金の夜明け」コレクションがすべて盗まれている(犯人はテート殺しのチャールズ・マンソン一味という説が濃厚)。この災難は一部の関係者に天罰と受け取られた。 それにもめげず、リガルディーは次々に新作や旧作の復刻を通じて魔術実技理論の啓蒙をはかり、また魔術の歴史を批判的に研究する作家たち(例えば John Symonds, Ellic Howe)を罵倒することに熱意を注いだ。 リガルディーは常に一匹狼として活動してきて、かつて団を率いたことはなかったが、晩年に至ってついにアリゾナの一連の魔術師たちのカリスマとして担ぎ出され、熱心な信奉者に囲まれて「黄金の夜明け」系の全面的見直しをはかっている。 1985年3月10日、心不全のためにアリゾナの自宅において死去。 |
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主要著作 | A Garden of Pomegranates, Rider, London, 1929.: Llewellyn, St Paul,
Minnesota, 1970.: 『柘榴の園』片山章久訳、国書 刊行会、1983年。 The Tree of Life, Rider, London, 1932: Weiser, New York, 1969. The Philosopher's Stone, Rider, London, 1933.: Llewellyn, St Paul, Minnesota, 1970. My Rosicrucian Adventure, Aries, Chicago, 1936.: Llewellyn, St Paul,Minnesota, 1971.: as What You Should Know About The Golden Dawn, Falcon, Phoenix, Arizona, 1983. The Golden Dawn, 4 vols., Aries, Chicago, 1937-40.: 2 vols., Llewellyn, St Paul, Minnesota, 1969.:1 vol., Llewellyn, St Paul, Minnesota, 1970.:『黄金の夜明け魔術全書』上下巻、江口之隆訳、国書刊行会、1993年。 The Middle Pillar, Aries, Chicago, 1938.: Llewellyn, St Paul, Minnesota, 1970. The Eye in the Triangle, Llewellyn, St Paul, Minnesota, 1970. Twelve Steps to Spiritual Enlightment, Sangreal Foundation, Dallas, Texas, 1969.: Weiser, New York, 1975. Ceremonial Magic, Aquarian, Wellingborough, Northamptonshire, 1980. :『召喚魔術』日浦幸雄訳、国書刊行会、1993年。 The Complete Golden Dawn System of Magic, Falcon, Phoenix, Arizona, 1984. |
参考文献 | An Interview with Israel Regardie: His Final Thoughts and Views, Falcon Press, Phoenix, 1985. |
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