Horton, W[illiam] T[homas]
W. T. ホートン
(1864-1919)


魔法名 Spes mea Christus (0-0, GD)

☆ 英国ヴィクトリア朝末期からエドワード朝にかけて活動したイラストレーター。イェイツの友人であり、一時期ながら「黄金の夜明け」にも籍を置いていた。

 1864年6月27日、ベルギー国ブリュッセルにて出生。両親ともに英国人。父親はホテルマン。後に一家はブライトンに引越し、ホートンもブライトン・グラマー・スクールに入学。
 グラマー・スクールを出たのち、地元の美術学校の建築製図学科に入学。製図の技術を習得し、建築事務所に就職。この間、とりたてた業績なし。
 1889年、父親が死去。遺産としてホートンは年50ポンドの信託金を受け取ることとなり、とりあえず生活には困らなくなる。
 1893年、自分の製図事務所を設立するも数ヶ月で放り出す。この頃から文筆にて身を立てる道を模索し始めたらしく、小規模な文芸同人誌を創刊。また油絵や線画を描き始める。この間、ビアズレーに影響されること大。またこの前後に結婚して一男をもうけた模様なれど、詳細は不明。

 ホートンは生来オカルト方面にも興味を有しており、1896年3月21日、友人イエイツの手引きで黄金の夜明け団に入団。しかし儀式魔術が性に合わないうえ、すでにはまっていたトマス・レイク・ハリスの哲学への傾倒もあり、僅か二ヶ月で退団している。

 1898年、イエイツの紹介文をつけた処女作『イメージの書』を出版。

 1899年、母親の死去により、遺産1200ポンドその他を相続。いよいよ生活に不自由せず。またホートン自身が意外に堅実な生活を送っており、散財とは無縁であったため、彼の死亡時には5000ポンド強の現金が残されていたとのこと。

 1904年頃から家族と別居状態に入り、単身南アフリカに向かうもケープタウンに到着するや次の船で帰国。友人の間で変人の評判を大いに博す。1906年にはマルティニスト・オーダーにも参入。

 1910年、ライダー社より『魂の道』を出版。好意的批評を寄せてくれた歴史家エイミー・オードリー・ロックと意気投合し、1912年からハリス流の性交渉を伴わない同棲生活に入る。

 1916年、オードリー・ロックが入院先の病院にて外科手術ののち死去。ホートンはほぼ精神的に再起不能になる。
 1918年初頭、車に轢かれる。
 1919年2月19日、カトリックに帰依したのち、死去。
 
 *以下はクロウリーによるホートンの批評。

 「『魂の道 − 線描と詩の伝説』 ウィリアム・T・ホートン
  少し前、私は神にウィリアム・T・ホートンが声を発することを禁ずるように懇願した。私の祈りは聞き入れられなかった。
  同様に、ウィリアム・T・ホートンもまた神に祈った。なにとぞ『春秋分点』に自分の著作を批評させないでほしいと。
 彼の祈りは聞き入れられなかった。
 こんなことじゃ、どんな人の信仰だって揺らぎますぜ!
 ラルフ・シャーレーのまことに啓発的な前書きがついているが、出来れば私が書きたかったものだ。
 では、勲章の裏側を見てみよう。
 イラストの主題はサンライト石鹸で出来てる一連の蛇腹ひだひだ岸壁、スパゲッティで出来てる海、太陽はコンパスで描かれた円で示されており、その周囲には光線を表すための非常に不揃いな線が描かれている − 定規を使ったほうがきちんと描けたんじゃないか? − 多分幼い妹にボール紙から切り抜いてもらった月、樹木はモリス商会の正確な模写だからまあ出来はよい。蝿叩きみたいな炎の剣、薔薇に星にその他いろいろ、すべてのものが、信じられないほどの粗雑さと陳腐さのもとに着想され、美的センスと技術の完璧な欠落のもとに実行されてしまったのだ。最悪の低俗漫画雑誌でも掲載拒否になるような絵であり、最良の数点ですら『アライ・スローパー』誌の水準に達していないが、感覚は同雑誌の最底辺に通じるものがある。
 言い忘れたが、神聖なるフォルム、天使的フォルムや人間のフォルムを表現しようとする試みも無数にある。これは私の表現能力を越えたものだ。
 そういうわけで、私としては、読者の皆様にホートンの本を買ってくださるよう願うだけである。こういう絵が存在することなど、実際に見ないと信じられないだろう。で、実在を信じたらどうなります?これらの絵の存在と神の存在は両立しないですぞ」
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 ここまでこけにされる理由のひとつに、ホートンのトマス・レイク・ハリスへの傾倒があげられる。イェイツはホートンを「黄金の夜明け団」に入れることでより深い象徴主義への開眼を狙ったのだが、ホートンはハリスを捨てることができず、退団してしまった。

1. Crowley, The Equinox, vol.I. no.5 (New York: Weiser, 1972) pp. 154-155.

別写真

壮年のホートン



主要著作 The Book of Images, Unicorn, London, 1898.
The Way of the Soul, Rider, London, 1910.


参考文献 George Mills Harper : W. B. Yeats and W. T. Horton, Humanities Press, New Jersey, 1980.
Winifred Dawson: The Porter's Daughter The Life of Amy Audrey Locke, self-published by the author, Winchester, 2014.
Koretaka Eguchi, W.T. Horton Tarot, Adam McLean, Glasgow, 2013.

参考ファイル Works of W.T.Horton


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