竜頭竜尾

ラファエルの解説



天文学者や学識者にはよく知られた事実であるが、天空における月の軌道ははるか古代よりドラゴンあるいは大蛇によって象徴されてきた。しかるにこの知識を伝承すべき者たちが古代シンボルに関してなにもわかっていない様子である。ゆえにこの場をかりて万人に理解できるよう説明をしておきたく思う。以下の図と解説を通覧すれば、いかに無学の徒といえども月の軌道を象徴するにあたっては大蛇を用いるしかないとわかるはずである。



曲線ABが黄道ないし地球の軌道の一部をあらわすとする。この道にそって地球がEからF、FからGへと移動する。それど同時に月が地球からほぼ同距離を保ちつつCからH、HからI,IからDへと蛇体上を蛇行していく。月が地球の軌道を北から南へと横切る場所がドラゴンズ・テイルであり、現代天文学では**としてあらわされる。月は半円CHを描いて上昇したのち、南から北へと地球軌道を横切り、ふたたび半円HIを描いて地球軌道に到達する。そして曲線IDへと曲がり、ふたたび北へと上昇する場所にドラゴンズ・ヘッドを置く。こうすれば地球のまわりを廻る月の軌道を蛇にたとえることがいかに適切であるかがわかるであろう。寓意図をより完璧に解説するべくこの場では黄道上の4点を通過させているが、月が北から南に下降する際はつねにテイル側、南から北に上昇する際は常にヘッド側にあることを理解せよ。この寓意図のドラゴンのヘッドとテイルにはきわめて重要な占星術的な意味合いが付加されており、バビロニアの司祭たちはこの蛇の図を用いて迷信を流布し、あるいはある種の詐欺ともいうべき願望を達成していたのである

ラファエル『十九世紀の占星術師』


解説 : ラファエルことロバート・クロス・スミスによる占星術概念「ドラゴンズ・ヘッド」、「ドラゴンズ・テイル」の解説である。後年の黄金の夜明け団においてもおそらくこの解説が用いられていたと思われる。これを初級とするならば、いわゆる「竜の術式」は上級、イエイツの螺旋は最終形であろうか。教義を伴わない寓意図、あるいは寓意図から切り離された教義は恐ろしくわかりにくくなるのであって、関係者におかれましては小まめな保存の徹底をお願いしたく思うのである。


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