Tarot Deck Review

ウェイト・タロット・ジュビリー・エディション

Waite Tarot Jubilaums Edition. Konigsfurt Urania., Germany, 2009.

ドイツ、ケーニッヒスフルト社製、2009年。木製専用ケース入り、側面金箔仕上げ、500個限定、保証書付。
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1909年、英国のウィリアム・ライダー社が製作発売したいわゆる「ライダー版」は、今年2009年がちょうど100周年にあたるため、さまざまなカードメーカーから記念デッキが発売されております。まずは今年5月にUSゲームズ社が豪華セットで送り出した『パメラ・コールマン・スミス記念セット』があり、ほぼ時を同じくしてイタリアのロ・スカラベオ社も『PCS100周年パック』を出しておるわけで。そしてこのたび、ドイツのケーニッヒフルト社から出た『ジュビリー・エディション』が手に入ったため、早速に紹介を行いたく思うのであります。

まずケーニッヒ記念デッキが先行のUSG、LSの記念デッキと異なる点は、なんといっても500個限定、さらにデッキ自体の金箔仕上げ、専用木製ケースといった豪華仕様でありましょう。しかしのっけからがっかりと申せましょうか、肝心の箱は仕上げが荒く、底の部分に隙間が見られる始末。気を取りなおして中を改めると、カードは和紙に包まれた上等のものでありました。封蝋との触れ込みでしたが、それ風の赤いプラスチックというのが正解でしょう。

サイドギルトは見事なもので、ほぼ鏡面といってよいフィニッシュです。バックパターンはサークルリンクとでもいうのか、独自のもの。そしてこの外見に見覚えのある方もいらっしゃるでしょう。これは1990年頃に「ライダー・タロット・デラックス」の名前で流通していたデッキの特徴を備えています。おそらくそれの限定復刻と考えて間違いない。

金箔塗りのためにカード同士が若干のくっついております。まあ、これは数回、フルシャッフルすれば落ち着くでしょう。


さてカード自体の評価です。そもそもライダー版100周年記念デッキという触れ込みならば、100年前の初期デッキを復刻するのが当然と、こちらは思い込んでしまいます。

USゲームズの記念デッキは絵面は最初期ながら、バックパターンは薔薇とPCS署名をあしらったオリジナルもの。LSのそれはバックパターンがローズ&リリーという最初期復刻なのに、タイトルはコンピュータ・フォント、しかも5カ国語マルチという味気なさ。

ちなみに1993年に出たUSG「オリジナル・ライダー・ウェイト」は、ローズ&リリーの背に1930年代の後期ライダーの絵というややこしさ。このあたりの不徹底ぶりは、完全復刻にしてしまうと著作権主張が困難になるというお家の事情です。さらにLS版はUSG版の著作権主張とのバッティングを避けるため、英米では発売されておりません。

ケーニッヒのジュビリー・エディションは1971年にUSゲームズから出たスタンダード・ライダーをベースとしています。ただし現行のイタリー印刷のデッキが持つ化学薬品臭がなく、その点はポイントが高い。ラミネーションも控えめで、色合いも落ち着いています。500部限定の金箔ヴァージョンながら、実はもっとも実占に適したデッキといえるのではないのでしょうか。

さて気になるお値段のほうは、購入場所によって若干のばらつきがあるものの、おしなべて50ユーロというところ。500個限定ということを考えれば、欲しいと思われた方は急がれたほうがよろしいかも。流通はほぼドイツ国内に限られている感じです。ドイツ・アマゾンでも扱っています。




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