魔術ビギナーのためのO∴H∴特別講座

(初級診断編)


ええ、魔術の養老院O∴H∴が初心者のために開く特別講座です。

 これから魔術を研究してみたいとか、勉強してみたいとか、修行してみたいとか、そういう人を対象にしておりますので、「這いまわる竜の術式がうまくいかない」などとごたくを並べるすれっからしは相手にいたしません。さようお含みおきください。

 まず、どのレベルをビギナーとするのか、それをはっきりさせましょう。
  1. 黄金の夜明け団という名前を聞いたことがない。
  2. 占星術の十二宮を全部いえない。あるいは星座名でしかいえない。
  3. カバラという言葉を聞いたことがない。
  4. 魔術とは手品のことであると思っている。


 以上の四点に該当するようなら、あなたはビギナーではなく、それ以前の一般人、常識人です。魔術なんぞに興味を抱く必要すらないはず。そういう方がこのサイトを訪れることもないでしょうから、次のレベルにいきます。

  1. 黄金の夜明け団、あるいはクロウリーという名前を聞いたことはある。
  2. おまじないや占いが好き。
  3. ちゃんと修行してみたいけど、どうすればいいのかわからない。
  4. 瞑想とか呼吸法とか、三日坊主だけどやってみたことがある。
  5. 魔術に興味があって、その種の本を何冊か読んだけど、どうもよくわからない。


 ま、以上のどれかが該当するようなら、あなたは立派な魔術ビギナーですな。なに、恥ずかしがる必要はない。誰だって最初はそうです。むしろ自分は健全であると胸をはりなさい。

 続いて魔術ベテランのレベルを紹介しましょう。

  1. 黄金の夜明け団の歴史と教義に精通する。
  2. 占星術、タロットその他の占術を一通りこなす。
  3. 五芒星儀式、中央の柱、パスワーキングといった実践を三年以上継続して行い、一定の成果を得る。
  4. 魔術的カバラに習熟し、かつ正統カバラやユダヤ教、キリスト教に関する正確な知識を持ち合わせる。
  5. オカルト全般の知識があるため、簡単にはだまされない。たいがいのペテンの手口を知っている。


 以上の5点に「イエス!」と答えた人はもはやこのページを読む必要はなし。ウジュパランドに飛んでお笑い記事に目を通してください。

 さらに魔術マスターのレベルにも触れておきますか。

  1. 古代から現代までの魔術の歴史と教義に精通する。
  2. 魔術儀式はたいがい暗記していて、どの司官の役でもこなせる。
  3. 天体観測による占星術を行い、タロットも自作する。
  4. 立体天球術式、エノキアン、アブラメリン等の実践を行い、一定の成果を得る。
  5. 自ら団を率いて独自の象徴体系のもとに活動する。


 したがって、魔術ビギナーの方は魔術ベテランを目指すべきなのですが、ベテランの域に達する以前に“魔術マニア”という脇道にそれる可能性がありまして、一応こちらに進んだ場合どうなるかも紹介しますか。

 魔術マニアとは、

  1. やたらと魔術書を集め、背表紙を眺めただけで読んだ気になっている。
  2. 友人に魔術をやっていることを吹聴してまわる。
  3. 地道な修行は敬遠する。
  4. 結局、人畜無害である。


 以上の4点、大なり小なり身に覚えのある人も多いはず。しかし、これはこれでいいのです。どんな分野にせよ、下手の横好き、マニア、おたくのたぐいが裾野を取り巻いてこそジャンルとしての発展があるものですわ。人畜無害なら他人があれこれケチをつける筋合いではない。

 むしろ恐ろしいのは魔術ベテランに至るあたりから始まる“魔術ファンダメンタリスト”という落とし穴のほうですな。すなわち ―

  1. 魔術を唯一絶対の道と確信する。
  2. 魔術を修行しない人間を無知蒙昧の輩であると軽蔑する。
  3. 魔術を修行している自分は優等な人間であると思いこむ
  4. その優等である自分が現世でぱっとしないという現実に対して、責任を現世のほうに転嫁する。
  5. 自己の心中に渦巻く嫉妬と憎悪と根拠なき優越感を肯定し、現実から目をそむける。
  6. 魔術結社という狭小な人間集団のなかで神や預言者と化し、指導や教育と称して初心者や弱者をいじめる。


 こうなるくらいなら魔術マニアのほうがずっとまし。いや、魔術など知りもしない一般人のほうがずっとえらい。

 なお、マスターの上の段階も一応用意されとりまして、これをアヴァターと称する。

  1. 自己の利益をはからず、他者に奉仕することを旨とする。
  2. 人それぞれの道を認め、それに適切な指導を与える。
  3. 神仏を尊び、これを頼らず。


 ここまで来ればもうなにもいうことはない。ただし、いまだ魔術の世界ではアヴァターは出ていないといってよいでしょう。

 なお、マスターからアヴァターへ移る際にも脇道がありまして、それが“ジョーカー”の道でありますわい。

 ジョーカーとは一部分マニアに似ておりまして、

  1. もう遊んでばかりで修行もしなくなる。
  2. 楽しければそれでよい。
  3. 後進の指導など知ったこっちゃない。
  4. 結局、人畜無害である。


 すなわち図解すると−


一般人
 ↓
ビギナー
 ↓→マニア
ベテラン
 ↓→ファンダメンタリスト
マスター
 ↓→ジョーカー
アヴァター


 ともあれ、ビギナーはマニアになるかベテランになるか、あるいはビギナーのままやめてしまうか。どれも正しい選択なんですな。

 要点は他人に迷惑をかけないこと。

 ファンダメンタリストだけはいただけませんぞ。あれはみっともない。

 次回はビギナーのための心得を丁寧にやりましょか。


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