Fu Manchu
フー・マンチュー


☆ 世界征服をたくらむ謎の中国人。あらゆる国の暗黒街に精通しており、中国の魔法・秘術をも用いる大悪党。もちろん小説の中の人物であるが、一部分、クロウリーをモデルにしているという噂もあるため、ここに収録される。

 フー・マンチューの原作者サックス・ローマー Sax Rohmer(本名 Arthur Saarsfield Ward 1886-1959)が「黄金の夜明け」団員であったという説があり、そこらに関係して、クロウリー云々が出て来るのであるが、ローマーの「黄金の夜明け」団或はそれに類似した団体への参入はいまだ確認されておらず、まず憶測以上のものではないと思われる。 ローマーがフー・マンチューを創造するに至った経過は、本人がピーター・アンダーウッドに語ったところによれば、以下のごときものである
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 1911年の秋の宵、濃霧渦巻くロンドンのチャイナタウンを訪れたローマーは、細身長身、敏捷で年齢不詳の中国人が若いアラビア美人を連れてタクシーから降りてきて、暗くみすぼらしい扉の中へ消えていくのを見たという。瞬間、ローマーは“いける”と思ったようである。1913年、『フー・マンチュー博士の謎』を皮切りに、フー・マンチューはシリーズ化されてベストセラーとなっている。

 ただ、クロウリーが中国狂であったのは事実であり、1920年代の彼の公的悪評(食人鬼、世界最大悪人 etc)も手伝って、フー・マンチューのモデルとされたのは無理からぬものがあったといえよう。

1. Peter Underwood, No Common Task (London: Harrap, 1983) p. 84.

主要著作
参考文献 The Mystery of Dr. Fu Manchu, Methuen, London, 1913.
The Return of Dr. Fu Manchu, McBride, New York, 1916.
The Hand of Fu Manchu, McBride, New York, 1917.
The Book of Fu Manchu, McBride, New York, 1919.
Daughter of Fu Manchu, Doubleday, Doran & Co., Garden City, 1931.
The Mask of Fu Manchu, A.L.Burt, London, 1932.
Fu Manchu's Bride, Crime Club, Garden City, 1933.
The Trail of Fu Manchu, Doubleday Crime Club, New York, 1934.
President Fu Manchu, Crime Club, Garden City, 1936.
The Island of Fu Manchu, Crime Club, Garden City, 1936.
The Drums of Fu Manchu, Crime Club, New York, 1939.
The Shadow of Fu Manchu, Jenkins, London, 1949.
Re-Enter Dr. Fu Manchu, Jenkins, London, 1957,
Emperor Fu Manchu, Jenkins, London, 1959.

* all of them by Sax Rohmer.



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