Atwood,
Mary Anne (nee, Mary Anne South) メアリー・アン・アトウッド (1817-1910) ☆ 英国の錬金術研究家。一冊の稀書を著したことで有名。 1817年、ハンプシャーの裕福な田舎紳士トマス・サウスの一人娘として出生。やはり錬金術の研究家であった父親の影響を受けて、幼少時から古今の錬金術文献に親しみ、長じては父親の研究助手をつとめる。 1850年、それまでの研究成果をまとめて A Suggestive Enquiry into Hermetic Mystery を匿名で発表するが、100部足らずが世間に出回った時点で突然販売を差し止め、在庫分をすべて廃棄処分としている。すでに出てしまった本も、メアリー・アン自身が苦労して買い戻してまわったため、ほとんど入手不可能の稀書となってしまった。父親が本の内容に驚き、叡知の公開を時期早尚とみて娘に回収を命じたからだという。 メアリー・アンの錬金術思想は魔術的なもので、宇宙に普遍的な生命力を認め、その生成と発達の過程を錬金術的象徴の中に読み取るというものである。この思想は後年の「黄金の夜明け」団に於ける錬金術展開やユングの心理学的錬金術の先駆けをなすものであり、1850年という時代的制約の中にあってはきわめて革新的なものであった。 1859年、ヨークシャーの牧師アルバン・トマス・アトウッドに嫁ぎ、静かな読書三昧の日々を送る。1883年、未亡人となった後、当時創立したばかりの神智学協会英国ロッジに関心を抱き、1886年には父親から引き継いだ膨大な錬金術文献コレクションを協会に寄付している。もっとも、神智学協会にとってこのコレクションは宝の持ち腐れであり、なんら有効に利用されることなく、後に好事家の手に渡っている。 メアリー・アン・アトウッドはその後、ヨークシャーを出ることなく、イザベル・ド・スタイガー等の訪問を受けたり書簡を交わすのみの隠者のごとき日々を過ごし、1910年4月13日、死去している。 |
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主要著作 | A Suggestive Inquiry into Hermetic Mystery, Trelawney Saunders, London,
1850.: William Tait, Belfast, 1918.: Yogi Publication Society, Illinois,
no date. |
参考文献 | de Steiger, Isabelle:Memorabilia, Rider, London, no date(1927). Massey, C.C.: Thoughts of a Modern Mystic, Kegan Paul, London, 1909. |
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