魔術道具の理想と現実


火の棒およびはじめのことば


 そもそもいかなる分野にあっても理想的道具と現実的対処が存在するのでしょう。たとえば小生は最新最速のワークステーションと光ファイバー環境でネット活動やグラフィック製作を行いたい。しかし現実には鈍足PCとアナログ・ダイヤルアップでぐじゃぐじゃしているのですな。

 「お金かかるし」、「ま、これでもなんとか」と自分に言い聞かせ、しまいには恵まれない環境こそ天与の修行であると納得するわけで。

 この状況は元祖「黄金の夜明け」団にも共通するものだと思うのですよ。かれらが作製した魔術道具は、どうもどこかしら貧乏くさいというか、なにかしら妥協の産物の観がありますわ。

 このコーナーでは、かれらが用いた魔術道具を再検討し、理想的にはこうだったんじゃないかと思われるものをCGで表現してみようと思います。

 CGは小生がShadeとフォトショップ・エレメンツで作製するのであります。ここからしてもう「現実的対処」になっております。ほんとはMayaとかLightWaveとかをいじりたいのですけれど、「お金かかるし」、「ま、これでもなんとか」。そして機能限定版のアプリを使いこむことが「修行になる」と自分に言い聞かせるのであります。





 「この棒の材質は、丸くて滑らかな空洞の棒でなければならない。棒のなかに磁気化した鋼鉄の棒を通し、両端から十六分の一インチほど突出させる。竹や籐などは天然の空洞を有しているから、これを素材とするのも便利である。竹を用いる場合、三節が均等になるようにする。木製の棒の場合、ろくろで三つの輪を削り出すが、竹の場合はこの配置になるようにする。
 棒の長さは最大でも18インチである。磁石は強いものでなければならない。棒の一端は円錐状にする。磁石の北極(羅針盤の針の北極を弾くほう)を棒のなにもない端に配置する。全体は炎の緋色に塗り、黄色の帯で三分割される。円錐部には赤地の上に三つの炎状のヨッドを明るい黄色で描く。
 柄の部分に、火の元素の神聖名と天使名を明るい緑色で描く。印形と達人のモットーも書き込むこと」
(『黄金の夜明け魔術全書』下巻53p)

 以上、元祖「黄金の夜明け団」にある火の棒作製の指示であります。この棒を本気で作るとなると、やはり旋盤ないしろくろを用いて円錐部からなにから完璧に削り出すのが一番なのです。しかしそこに鋼鉄の芯を通すとなると話がややこしくなる。一度棒を縦割りにして溝を彫り、鉄芯を埋めこんでから貼り合わせるという細工を推奨している文献もあります。

 いっそのことステンレス筒を主体として、棒全体を磁気化してもよいのでは。

 この棒は各種魔術道具のなかでも比較的「とほほ度」が低いといえましょう。




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