われわれは、逆巻く海に突き出した暗い断崖の上に立っていた。頭上の空には輝く虹に囲まれた栄光の太陽があった。その虹は、カメレオンの小径として知られるものであった。 わたしは見た。やがて天が開けゆき、ギリシャのメルクリウスに似た姿が降臨してきた。電光のように輝いていた。かれは空と海のあいだに浮かんでいた。手に持つ杖は、人間の目を眠りのうちに閉じさせ、また睡眠者を自在に目覚めさせる杖である。そして杖の先端にある球からは、おそるべき光が放たれていた。 |
『黄金の夜明け魔術全書』下巻253頁 |
本来「M」文書にはメルクリウスの挿絵が入っていたが、リガルディーは『黄金の夜明け魔術全書』の編纂にあたってこれを省略している。後年に編纂された『コンプリート』では一応の絵が入ったが、もとの文書にあったデザインとはかけはなれてしまった。ゆえにだいたいのところをCGで再現してみたのが下の図である。
The Universal Mercury of the Book "M". |
元絵はもっと雑な線画である。