タロットを飛ばす話

小生、正月といえば凧揚げ、独楽廻しが基本であった世代である。かの季節が近づくにつれ、ふと悪戯心が起きたのも当然であったといえる。

すなわちタロットを凧にして飛ばすというアイデアである。どうもこれがいまだ世間的に広まっておらず、タロット・コミュニティーにあってすら初耳というトピックであったらしい。そもそも長方形の凧というのが日本独特のものらしいのだ。われわれは四角い凧に役者絵や墨痕あざやかな「龍」の字が描かれていても当然と思っている。方形凧は世界的には少数派のようである。

さて生来、不器用な小生である。山林から竹を切り出し、割って竹ひごを作ってエトセトラなどとやろうものならタロット凧の完成はとうていおぼつかない。ここはプロの製品にご登場願うのが筋であろう。徳島の凧専門株式会社「ウインドラブ」社のサイトで「新角凧 材料10個セット」と「35mポリカード巻き凧糸を注文した。送料込みで2000円弱の買い物である。連凧にも使える小型の凧キットで、絵は各自が描くことになる。製作はきわめて簡単とのこと。このセットは注文してから3,4日で届いた。迅速なサーヴィスも好感が持てる。

しかし小生、絵を描く元気もない。というかここはプリンターを使って写真からなにから空に舞わせるのが狙いである。さいわいエプソンのA3プリンターがあるので、早速にタロットを数枚スキャンして、いきなり凧用紙にプリントする。数回の失敗を経て、とりあえず凧を二枚作成した。この件は海外のタロットマニアたちにも紹介するつもりなので、少しばかしジャポニズムに振った写真を用意してみた。



独楽は百均ショップで売られていたもの。花札とうんすんカルタは、まあ賑わいということで。

出来上がった凧はB4ほどの大きさである。製作に要した時間は一枚あたり20分もかかっただろうか。必要なものはたいていキットに入っていて、こちらで用意するのはセロハンテープぐらいだった。

さればとばかり、凧を手に出陣である。ちなみに過疎化が進むわが街であるが、ここに新たな魅力を発見することとなった。なんと、恐ろしいほど凧揚げに向いた街なのだ。電柱もなく、電線の一本もない休耕地まじりの田畑が延々とひろがり、海が近いせいで常時3,4mの風が吹き抜けていく。冗談抜きで町興しの一策として凧揚げ大会を提唱してみようと思う。これほどの好条件はちょっとないのではないか。

実はこの20年ばかし、凧など揚げたことがなかった小生である。しかしウインドラブ社の新角凧とわが町の好条件は、素人の凧にも確実な飛揚をもたらしたのである。



かくして北部九州の空にマルセイユ版の「愚者」が舞うという妙な仕儀に至った。空に浮かぶタロットカードはそれ自体が魔術的表象である。無論のこと、行事としての凧揚げに願望魔術的要素が入っているのは否定できないところであろう。タロットというわかりやすい象徴を持ち込むことで、より輪郭が鮮明になったといっていい。

続いてヴィーヴィルの「塔」というか「雷」の登場である。l


シロツメクサの緑色とよいコントラストである。飛揚の写真は割愛するが、なかなかよい姿であったと言っておこう。

 この方面も面白そうなので、ちょくちょくやってみようと思っている。タコキットはまだ6枚分は残っている。次は有名魔術師の顔をプリントして空に舞わせ、急上昇、急降下させて遊びたい。万物に楽しみを見出せてこそホモ・ルーデンスであると、ホイジンガも言っていた(出典曖昧につきご容赦)。


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