パメラ・カーデン・ブロック書簡 2
1895年12月28日

真誉兄宛

クリスマスの喧騒のさなか、団関係の書簡や儀式の送付を後回しにしておりまして、あちらこちらに支障が出ておりました。しかし祝日は実質上おわりましたのでご質問の件に回答したく思います。

 室内にて円を描くという表現は右手に剣を持って周行するという意味です。聖別済の剣が出来上がるまでは先端の尖ったもので代用してかまいません。一番大切なことは、儀式の開始前にこの方法できれいな円を描くことです。そうすることで邪悪なる影響力を遠ざけ、また召喚する諸力を渦にして円内に引き寄せることができます。すなわち分散の危険をすべて回避できるわけで、これは実践魔術師全員が心がけるべき要訣と申せましょう。まず室内あるいは作業区画に完全な円を描き、しかるのちに召喚作業に進みます。小追難儀式を行うことで室内をクリアにし、円によって作業中のクリアランスを確保するのです。こうすれば召喚した諸力は最大限まざりけのない純粋なものとなるでしょう。
 五芒星や六芒星の諸力の召喚にあたっては、未聖別のロータス・ワンドあるいは先端の尖った道具を使ってください。短剣がない場合は鋭いペンナイフが便利です。
 私は外陣の開式にある神聖名あるいはタブレット名を用います。一般象徴はどれほど充填してもこれでいいというものではありません。儀式中、元素象徴をいちいち祭壇からとりあげる必要はありませんが、なさりたいというのであればご自由に。私はしないというだけです。頂戴したお手紙を読み返しましたところ、貴兄がまず最初になすべきはロータス・ワンドと薔薇十字の聖別でしょう。そうすれば効率のよい武器が手に入るからです。このたび私はS.A.の通達により正式に副記録係に任命されておりますが、もちろん不確かなこと全般につきましては首領に確かめたのちに明言するつもりです。水と火による浄化と聖別に関しては、後者は香煙を用いるほうがよろしいでしょう。こうすることで四元素すべてが各々の務めを果たすよう迫られるからです。塩を水にぱらぱらと入れることで▼と▽というふたつの消極エレメントを浄化に参加させます。ランプから火をとって香を焚くことで、△と▲というふたつの積極エレメントを結びつけて聖別に向かわせるのです。
 五芒星召喚大儀式では、カバラ十字を切ったのち、◎とともに祭壇の北西に進み、南西に向かって積極の均衡化を行います。それから南東に進み、北西に向かって消極の均衡化を行うのです。それから東に進み、あとはご存知のように▲△▼▽、東にてルクス合図等々。
 ご提出の聖別儀式次第を慎重に検討させていただきました。多少なりとも目につきましたところを文書に添えております。この書簡にてもいささか触れました。
 私でお役に立つことがあればどうぞ遠慮なくおっしゃってください。得心のゆかないことがあればさらに詳しくお答えいたします。

 それではマルクトに降りることにいたしましょう。七面鳥をお贈りいただき、L.O.も私も心より感謝いたしております。絶妙のタイミングと申しましょうか、L.O.が買いにいこうとしたまさにそのときに届きましたのです。おかげさまでSSDD真誉姉とともにそれは楽しいクリスマスを過ごすことができました。
 私どもより新年のご挨拶をお受け取りください。来年もまたお目にかかる機会が多々ありますことを祈念しております。

心より友愛をこめて


シェメベル
解説 : パメラ・カーデン・ブロック(1872-1929)がイエイツからの魔術的質問に答える形で返信した書簡である。察するにイエイツは魔術武器聖別儀式の細かい部分にこだわっており、セカンド・オーダーでの先輩にあたるパメラに指示を仰いでいるのである。
 最終パラグラフにある「マルクトに降りる」というのは俗世の話をするというジョーク混じりの表現である。新婚であるブロック夫妻のクリスマスにイエイツが七面鳥をプレゼントし、そこにフロレンス・ファーがやってきてパーティーが開かれたというのであるから、この頃が黄金の夜明け団の一番楽しかった時期であろう。


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