魔法のランプ


 下の図版はレヴィの『高等魔術の教理と祭儀』に掲載されているから、目にした方も多いであろう。剣、ロッド、ダガーとともに描かれているため、不注意な人間はすべてが一体化していると思い込むようである。

 魔法のランプは金、銀、真鍮、鉄の四金属から構成されねばならぬ。中央柱部分は鉄、鏡は真鍮、貯蔵部は銀、頂上部の三角形部分は黄金とする。三金属からなる三つ編みチューブの枝部分を左右に伸ばし、各枝部分に3個の灯心部ができるように細工する。左右3個ずつ、中央の三角形部分に3個、計9個の灯心を備えねばならない。ヘルメスの紋章を中央柱部分に刻み、その上にクンラートの双頭アンドロギュヌスを配置すべし。下の部分を尾をくわえる蛇で囲む。貯蔵部にはソロモンの印を刻むこと。このランプには2体の球をとりつけなければならない。ひとつは七精霊をあらわす透かし模様で飾り、他方は同型ながら一回り大きくし、内部を四区画に仕切って色つきの液体を満たす。装置全体は木製の柱の内部に仕込み、柱の中で自ら回転できるようにする。必要に応じて光を漏らし、召喚時の祭壇上の煙に投影する。
Eliphas Levi : Transcendental Magic (Eng.tr. A.E.Waite : New York, Samuel Weiser, 1974), p.262.

一応の格好をCGで構成してみると以下の図となる。


 

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 さて問題となるのが大小二つの球体である。レヴィの記述がいまひとつ明確でないが、おそらくこの球体はランプのほやのようなもので、ランプにかぶせて用いるものと思われる。小さいほうには「七惑星の精霊」の透かし絵が入り、他方にはカラーフィルターとして色つき液体を満たすのであろう。一応これと思われるものをCGで構成してみた。







 「七惑星の精霊」はレヴィの『魔術の歴史』にある図版を用いている。フィルター・グローブのほうをワンサイズ大きくするのは、両者を同時に用いることを考慮しているのであろう。

 さらにこれらを木製の柱のなかに組み込み、必要に応じてスリットから光を漏らして投影するという。すなわちCGにすると以下のようなものか。
 このランプは露骨なまでに幻灯機であるから、人により好みが分かれるであろう。事実、レヴィの小道具類を大量採用した「黄金の夜明け」団にあっても、このランプは無視されている。さらにいえば、レヴィとて実際にこのランプを製造し、使用していたのか。「だったらいいな」願望の一種だったのではないか。そもそもプロジェクターとして用いるには光源が分散されすぎているし、熱処理の配慮もなされていない。木製の柱の内部に組み込むなど、防火の観点からいって無茶であろう。小生のCGでも柱の内側にはステンレスを用いているくらいである。




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