The Lesser Pentagram Ritual

1 Touching the forehead, say Ateh
2 Touching the breast, say Malkuth
3 Touching the right shoulder, say ve-Geburah
4 Touching the left shoulder, say ve-Gedulah
5 Clasping the hands upon the breast, say le-Olahm, Amen.

6 Turning to the East, make a pentagram of Earth with the proper weapon. Say I H V H.
7 Turning to the South, the same, say A D N I
8 Turning to the West, the same, say A H I A
9 Turning to the North, the same, say A G L A

10 Turning to the East, extend the arms in the form of a Cross, say
11 Before me Raphael
12 Behind me Gabriel
13 On my right hand Michael
14 On my left hand Auriel
15 For about me flames the Pentagram
16 And in the Column stands the six-raiyed Star.

17 Repeat 1 to 5, the Qabalistic Cross.


 以上、世に伝わる一般的な小五芒星儀式である。この簡潔な儀式はGD流魔術師のもっとも愛用するところであり、各所各書で紹介されているため、読者にはなにをいまさらの観もあるだろう。

 しかるに仔細に検討してみると、意外に各人、解釈が異なる部分が出てくるのである。

 カバラ十字の部分はほぼ問題がない。5の手合わせの部分で、指を組むか否かくらいであろう。
 6から9に関していえば、まず使用する武器がワンド派とダガー派に分かれる。指二本、あるいは掌という人も多い。神名に関しても、IHVHをヨッド・へー・ヴァウ・へーで読むか、ヤハヴェと読むかでもめる。

 10から16までは、まず天使のテレズマ像が問題となるが、これは差異をあげつらうときりがない。タロットのコートカードの王たちを用いる人も多い。ラファエルの持ち物を棒とするか剣とするかは、いまだに決着を見ていないトピックである。

 意外に見落とされがちなのが15の冒頭の for のニュアンス、それに単数のペンタグラムであろう。これから記す解釈は小生独自のものであるから、読者の方々はあまり気になさらないほうがよい。

 そもそも召喚儀式の基本構造という観点に立つ場合、われわれの小五芒星儀式の記述はスケルトンといってよい。召喚儀式の基本は、まず神威を借り、召喚対象に呼びかけ、現出せしめることにある。すなわち単語の羅列である暗号文書から複雑な位階儀式がビルドアップされたように、「ペンタグラム、IHVH、わがまえにラファエル」という要素から I invoke you the Archangle Raphael by the diviine name Y H V H and the holy sign (draw pentagram) that you appear before me without delay といった長口舌を構成するべきなのかもしれない。

 さて for のニュアンスであるが、これは明らかに「理由を表す for 」と呼ばれるものである。ようするに大天使に「わが前に現れよ」と命令/要求/懇願する根拠として、「わたしの周囲にペンタグラムがもえあがり、六筋の光を放つ星が屹立するからだ」と宣言しているわけだ。この種の for の用法はGD文書全体を通じて一般的である。エノキアン・コールにも多数見うけられる。逆にいえば、この for があることで、それ以前の before me -- が単なる情景描写ではなく、命令/要求/懇願であることが明らかになる。

 続いて単数のペンタグラムである。すでに四つのペンタグラムを描いている関係上、この単数は誤植の類として無視する人も多いようだ。バトラーの魔法入門では about me flame the Pentagrams と、三人称複数現在になっているし、ガレス・ナイトも同様の記述をなしている。しかし小生はこの解釈は採用しない。このペンタグラムは第五のペンタグラム、術者を中心として足元に水平に広がるものと考えている。そもそもペンタグラムが四大プラス霊という五元素にして人間を表すものである以上、五つ描くのが筋なのであって、五番目のそれが自分を中心とする大きなものとなるのは自然であろう。さらに小生の感覚としては、天使を指名してテレズマ像を構築する時点で、召喚に用いられたペンタグラムは消えているのである。燃えるペンタグラムがあって、その向こうに巨大天使像という構図は煩雑であろう。

 six rayed star に関してはだれも確証が持てないようである。ヘクサグラム説が根強いが、個人的には六光条星すなわち*説も捨てがたい。ペンタグラム、ヘクサグラムといった表記を日常的に行う人間が、あえて「六筋の光を放つ星」と平叙している点を考慮すると、やはり*であろうか。ちなみにコランダム系のスター石、いわゆるスタールビーやスターサファイアに見られる光条も*である。

 とりあえず15と16の私的解釈を絵にしてみた。無論、これが正しいという類のものではない。単数のペンタグラムを第五のそれと考えた場合、こうなるという試案である。


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