Note : The following articles are a sort of burlesque based on the fictious history of the Hermetic Order of Golden Down (sic). Gentle readers are kindly requested not to take them seriously. All characters in this burlesque are fictious. Any resemblance to actual persons, living or dead or undead, is purely coincidental.




これまでのおはなし

 黄金の綿毛団の秘密本部がさまざまな勢力に監視されています。




3DCG紙芝居
魔法中年マグレガー
VS
七人の黄金吸血美女


第八話 青の増殖

 岡目八目ということであろう。物陰に潜むビル・エイツを発見するや、聡明なる明石の脳裏におおよその青写真が浮かんだのである。

 「彼奴は憂国の愛蘭詩人だ。これはまずい」

 金子も身を乗り出してきた。「だうなつているのだ」

 「愛蘭独立運動のために陽動をやらうといふのだらう。知つてのとおり、いま英国はボーア戦争のために四十万もの兵隊をローデシアに送り込んでいて、国内は空つぽだ。まさに好機到来だ」

 「理屈だ」と金子が頷いた。「しかし魔法結社を使つてなにが出来る」と云ひかけて、苦笑した。「それはこちらも御同様だつた」

 「林さんに話しておいたほうがよいだらう」と明石が云つた。


 閑話休題 −−

 この会話が交わされてから幾星霜、もはや金子も明石もこの世の人ではない。ちなみに名前を出された「林さん」とは林董駐英公使である。

 金子堅太郎はセオドア・ルーズベルト合衆国大統領と個人的に親しいという人脈を利用して対米外交を行い、日露戦争の講和に関して多大の功績があった。明石元二郎はスパイマスターとして数々の対露工作を展開した。露西亜内外の不満分子に資金と武器を提供して暴動やサボタージュを演出し、露西亜に甚大な損害を与えている。

 この二人がブライス街の安宿で企んでいるのは、さらなる対露破壊工作であった。ロシア宮廷に多数の妖僧怪僧の類が入りこんでいる点に目をつけた二人は、オカルティストを徴募してサンクトペテルスブルクに送り込もうというのである。不満分子や無政府主義者は爆裂弾を武器に騒擾不安を招くが、宮廷内部にはとうてい入り得ない。その点、妖人怪人の類はふとしたきっかけで宸襟を悩ます仕儀に至ること、古今の歴史が証明すること頻りである。

 明石は綿毛団を観察しつつ、パリのオカルト界にも注意を払っていた。そこへ綿毛団のマグレガーが突如としてロンドンへ向かったとの報告が入ったため、ブライス街のアジトで張り込みを行っていたのである。



 それは奇妙な風圧であった。可触の闇が不意に出現して周囲の熱を奪うときに生じる「魔風」であり、いかなる理由にてか最初は内向左渦巻き、直後に外向右渦巻きと決まっている。もちろんこの風は安宿に潜む福岡県人の関知しうるものではなかったが、三ブロック先の暗がりに佇む愛蘭詩人ビル・エイツの手の甲にはしっかりと捉えられていた。

 瞬間、ガラスが砕け散り、窓枠が宙に舞った。「綿毛団」秘密本部が所在する一室から人影が飛び出してきて、懸命に駆け出した。

 四秒後、破壊された二階窓からゲル状物体が流れ出してきた。それは青い燐光を放ちつつ緩やかに蠕動し、自らの意思で移動方向を定めていた。

2002 oujupah



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 次週展開の予想

 うーん、どうでしょうね。おそらくエイツとアルテミシアがなんらかのアクションを起こすんじゃないでしょうか。巨大人食いアメーバはなんの脈絡もなく綿毛団員アーサー・エドワードを襲うでしょうし、たぶん用もないのにタワーブリッジに登ったり大英博物館を壊したりするでしょう。この破天荒な状況に対処すべく、なぜか福岡県立国際陰謀団が立ち上がるでしょう。ま、やってみないとわかりませんが。

 乞うご期待。