Note : The following articles are a sort of burlesque based on the fictious history of the Hermetic Order of Golden Down (sic). Gentle readers are kindly requested not to take them seriously. Yes, we mean you !




これまでのおはなし

 正体不明の敵から霊的攻撃を受けたため、魔法中年マグレガーが少年心霊探偵アレックを同道して団本部に向かっています。




3DCG紙芝居
魔法中年マグレガー
VS
七人の黄金吸血美女


第四話 不定形生命体

 煤煙けぶる大英帝都ロンドン、その一隅ハムマアスミスはブライス路地に真に偉大なる魔法結社『黄金の綿毛』団の秘密本部が所在することを、当然ながら余人は知らぬはずであるが、なぜにか少年心霊探偵アレックが事細かに承知しておるのだからお話にならない。

 「予想はしておったが、やはり詳しいな」 マグレガーがうなった。

 「みなさん、あれで秘密を守っておられるつもりですかね」 アレックがあきれたように返答する。「スコットランドヤードじゃ有名ですよ。女王陛下のミイラ職人が魔法やってるって」

 魔法中年と少年探偵はとある安手集合住宅の玄関前にたたずんでいた。

 ***

 一方その頃、「女王陛下のミイラ職人」と揶揄された勅撰検死官ウィリアム博士は薄暗い室内にて不可思議な実験に勤しんでいた。まず数通の封筒を手にして天井裏にあがり、糸と糊を用いて自動落下装置を構築した。続いて左の鼻の穴に極薄絹布を押し込み、「むん」と気合も勇ましく一気に引き出してみる。さらには絵本から切り抜いた天使の絵を竹ひごに接着し、植木鉢のなかに仕込んでみる。呼び鈴が鳴らされたとき、博士は円卓の脚部に錐で穴をあけ、カミキリムシの幼虫を仕込もうと苦慮していた。

 「どうぞ」と扉を開けてみれば、大小凸凹の人影がある。一人は旧友マグレガーであるから問題はない。もう一人がオカルト界に悪名を轟かす小悪党アレックである点が若干気になった。

 「はいりたまえ」とうながせば、珍客二名は無言のまま入室してきた。

 口火を切ったのはマグレガーであった。

 「ハイドパークを散歩しているときふと、さびれた教会のまえにいきついた。すると不思議じゃないか、猫たちがやまほど集まっている。そのうち教会のなかから王冠のついた棺が担ぎ出されてきて、どこかに運ばれていったよ」 そう一息に語るとマグレガーは口をつぐみ、狂奔して暖炉に飛びこんで煙突を駆け上る猫の出現を期待した。なにも起こらなかった。

 ウィリアム博士もアレックも、魔法中年マグレガーの奇矯な言動には慣れていたからなんとも思わなかった。女王陛下のミイラ職人と少年心霊探偵は、猫の金網焼きを声高に論ずるマグレガーを放置して、本来的会話を開始した。

 しかしアレックには全長5000フィートの蝿も猫の王様も「黄金の綿毛」団の内紛も、すべてはどうでもよかったのである。かれの視線はこの部屋に入ってきたときから、奥にある実験卓上のガラス容器に集中していた。

2002 oujupah


 容器のなかのその物体は、青い蛍光を放ちつつゆるやかに蠕動し、ときおり体色を変化させる不思議な代物だった。

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 次週予告 :  星霜幾百歳、廃寺院の奥殿にて発見されたる謎の不定形生物の正体とは?! 聖ダンスタン錬金粉末のもたらす秘密怪異がモートレークの古城を襲うとき、エドワード・ケリーの悪意が300年の時空を超えて甦る! はたして大英帝都は救われるのか、福岡県人会ロンドン支部とはいかなる組織なのか、はたして義和団ロンドン支部まで登場するのか、無責任が無責任を呼ぶ物語展開に固唾を飲んで待つべし!