Note : The following articles are a sort of burlesque based on the fictious history of the Hermetic Order of Golden Down. Gentle readers are kindly requested not to take them seriously.




舞台設定

 昭和30年代、夏、九州の地方都市。
 小さな神社わきの空き地。こんもりと茂る木陰の下に自転車。
 鳴り響く拍子木。
 紙芝居のおやじ。
 半分破れたようなランニングシャツに半ズボンの子供たち。


 カナカナカナという物悲しいヒグラシの声がひびく夕暮れ。

 「水飴ば買わんでよかとね?」
 「よかよか」

 たちまち群がる子供たち。
 たったの五円がないために電柱のかげからこっそり見るしかなかった「かっちゃん」も「たあ坊」も、今日は最前列に陣取る。

 「今日から新しいのやけん」

 そして子供たちは「少年探偵団」あるいは「黄金バット」を期待したのだが。




3DCG紙芝居
魔法中年マグレガー
VS
七人の黄金吸血美女





 その夜、ロンドン郊外の人気のない墓地を訪れた者があった。

 白い髭の紳士が墓石をひとつひとつ、ランプで照らし出してはため息をついていた。

 「……サー・ジョン・アクスキル。マンチェスターの恐怖、か。これは役に立たない」

 55年前の殺人鬼の墓石は、彼の関心をひくものではなかった。

2002 oujupah


 「処刑された女ってのは、意外と見つからないものだ」

 紳士はそうつぶやくとランプを消した。

 何を隠そう、かの白髭紳士の姓名はウィリアム。勅撰検死官にしてフリーメイソンの重鎮、薔薇十字協会会長にして魔法結社 Hermetic Order of the Golden Down 『黄金の綿毛』団の創立者である。

 妖雲飛び魔風叫ぶ倫敦の墓地にて如何なる怪異が勃発するのか。六道冥府の牛頭馬頭もかくやとばかり、頻りと石塔を探る英国紳士の背後に忍び寄る不吉の影あらんか。諸君よ、思へ。近代文明の枢軸たる大英帝都にあってなお禁断の魔道を追求せんとする貴顕名流の多士済済を。東に奇説を唱える学者あり、西に憂国の愛蘭詩人あり。花の如き深窓の令嬢あり、妖艶の女優あり。北は蘇格蘭から南は仏国巴里に至るまで、かの魔法団の力は人知の及ばざるところにて発揮されておるといふに、その首領格の深夜の墓荒らしにも似たる所業の真意は何処にあるや。妖星の閃く処、世界秘密の獰猛なる悪鬼の登場を待つべし。


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