第一章

この偉大なる書物はその希少性ゆえに欲せられること甚だしく、それゆえにラビ達によりて大奥義と称されるもむべなるかな。かくも貴重なる原典をわれらに授けたるもラビ達なり。これこそは無数の山師どもがさがしてやまぬ真正なる奥義書なり。なれど手に入らぬとなれば山師どもは下作なる偽書をもって愚者をあざむき、これぞ真理の源泉なりとの触れ込みにて田舎者の金銭を巻き上げたるものなり。本書こそは真正なる大奥義書、かのソロモン王の真筆より転写したる逸品なり。かの王は生涯を通じて深奥玄秘を追い求め、ついには最奥の霊の寓居にすら入り込み、あらゆるものたちをタリスマンあるいはクラヴィクルの力にて拘束したる。正直に申し上げるが、この不滅の天才以外のだれが明かし得るであろうか、神が反逆の天使どもを撃ち滅ぼし屈服させる際に用いた滅びゆく言葉を。ソロモン王はひとたび天の高みに飛翔し、恐るべき復讐の神が持つ全能の言葉を学びたる。かの偉大なる王がわれらに明かしたもうたるは、星の力、惑星配置、後述する名称による霊の呼び出し方、また霊をも震え上がらせる撃破杖の正しい作り方なり。神はこの杖を天使に与え、アダムとエワを地上の楽園から放逐せしめ、また僭越謀反なる天使たちを懲罰し、深淵の底へと突き落としたる。この杖は雲を集め、また散らし、嵐と暴風と雷光を呼びあつめ、地上のいかなる場所をも随意に撃ち懲らすものなり。

 さればわれが語るソロモン王の口伝にしたがうべし。われはかの口伝に一句たがわずにしたがい、あらゆる喜びと疑念と満足を味わいしものなり。われは手がけた作業すべてに成功を収める幸運を得たるものなり。

[署名] ラビ アントニオ・ヴェニティアナ

     


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