from Franklin's Tale
若き学生として暮らしたる日々、 古の学問を追い求め、 ある術をば学ばんとした頃、 かつてオルレアンの書斎にて 自然魔術の書物を見たることを。 それは当時の学友たる法学士が (別の術を学ばんと彼の地にあり) 机の上に放置したるもの。 その書が語る内容は、 月の二十と八宿に触れる術、 または今日にてはとるに足らぬもの (聖なる教会の信仰のおかげにて 夢幻などに心迷わされることはないゆえ) この書物のことを思いだすと、 かれの心は喜びに踊りだし、 思わず独り言が口に出た。 「兄弟よ、すぐに治してやるぞ。 魔術師の術をもっていろいろな 幻影を呼び出すことができるのだ。 人の噂によく聞いた、 魔術師たちが大広間のなかに 海と帆船をもたらしたり、 ときにはおぞましい獅子を呼び出したり、 ときには牧場の如く花を咲かせたり、 ときには白や赤の葡萄をもたらしたり、 |
ときには白い石造りの城を見せしのち、 思うがままに消してみせるという。 それもすべての人の目に見えるという。 さればここより導かれる結論は オルレアンにて月の二十八宿と 自然魔術を知る古き友を見つければ、 わが兄弟に恋人を見せることができようぞ。 幻影をもってすればかの学生は 人の目よりブリテン島のすべての黒い岩を 消し去ることもできようし 船を自由に行き来させることもできようぞ、 それも一週、二週にわたりてそのままに。 さればわが兄弟の悲しみも癒されん。 さればかの女人も約束を守るしかなかろう。 さもなくば兄弟は女人に 恥をかかせるくらいは当然となろう」 くどくど語る必要はござるまい。 かれは兄弟の病床に駆けつけて 大いに慰めたので、兄弟とともに オルレアンに向かうこととなった。 しかしかの都にあと数マイルと近づいたとき 若き学生がどこからともなく現れて ラテン語にて挨拶をしてきたのであった。 |
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