愚者の持ち物 3 

 ごく初期の愚者に関する共通項として、下半身露出があげられる。グランゴヌールとヴィスコンティ・スフォルザの愚者はまだパンツをはいているが、デステの愚者となれば下図の通りである。グランゴヌールの愚者もデステの愚者も、頭にはいわゆるロバ耳帽をかぶっており、また足元に子供たちが配されている点でほぼ同種の存在といえるであろう。マルセイユ等の巡礼系愚者とは一線を画しているのである。

Gringonneur D'Este


 この種の愚者が表すものは「狂気」にして「変態」である。照応関係でいえば「月」であろう(すなわち lunatic )。すべてのタロットの愚者をGD流に「アレフ=空気」配属するのではあまりに芸がない。まして16世紀以前の古版ともなれば現行タロットとは枚数も配列も異なる場合が多い。デッキ別に照応を用意するほうが賢明である。照応など考えないのが一番ともいえる。

 下に出したものは15世紀末から一般に出回った木版組の占星医学シートである。四隅にいわゆる四大体液の擬人化カットがあり、中央には臓器と惑星の照応が描かれている。人体図の股間にうずくまる愚者は月の悪しき影響力がもたらす狂気をあらわしており、またその種の狂気が股間関係の活動において表出することを示している。上に出したグランゴヌールもデステも、ここに見る中世的モチーフの産物といってよい。

Four Humors detail


なお、人体図の股間にうずくまる愚者というのは上図のみの特別例ではない。参考のためにもう一種出しておくことにする。


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