タロットに似たもの 8 

フロスカートヤス

*このカードの解説はAeclectic Tarot Forum のSpoonbender氏の紹介に負うところがきわめて大である。冒頭に明記して御礼申し上げたい。

17世紀後半から19世紀末にかけて、オランダおよびフランドル地方にて盛んに印刷された安手の印刷物を英語でcatchpennyという。このなかにFloskaartjes フロスカートヤスと称する子供用遊戯札があり、デザイン面から見てこれをタロットカードの末裔と見なす人も多いとのこと。今となっては遊び方も失伝しているらしい。この情報を得た当博物館では直ちにヨーロッパ方面にて捜索を開始し、ユトレヒトの専門店にて1840年印刷の実物を確保した。さらに慎重にスキャンを取り、かなり大きな画像に変換して西洋魔術図書館にアップロードしている。

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 実物はなんとも安手の藁半紙に木版単色で刷られたものだが、一種独特の味わいがある。ざっと見ただけでおわかりのように、シート上部のほうが人物の社会的身分が高い。しかし最下位に「死」があり、時点に子供と「生命」を配するあたり、この遊戯札になんらかの哲学なり教訓なりが込められているのが見て取れる。


皇帝 皇后 王妃 司教 司教夫人
王子 王女 君主 君主夫人 伯爵 伯爵夫人
貴族 貴族夫人 狩人 狩人の妻 隊長 隊長の妻
旗持ち 旗持ちの妻 兵士 兵士の妻 商人 商人の妻
伝令 女伝令 船長 船長の妻 職人 職人の妻
農夫 農婦 召使 メイド 生命


以上、それぞれ対をなす18組36枚中、タロット的に注目すべきは当然、「死」、「皇帝」、「皇后」、「王」、「王妃」、「司教」、「司教の妻」等であり、またオランダからフランドルにかけて流行したいわゆる「バッカス・タロット」を視野に入れるなら、「隊長」も十分に考察の対象である。いわゆる「キャプテン・フラカス」との関連が考えられるからである。

残念なことに、この素朴な遊戯札は遊び方すらわからない。もっとも近年までほとんど研究らしい研究もなされなかった代物であるから、今後の展開次第では新たな情報がもたらされる可能性は高いといえよう。



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