『春秋分点』復刻版のタリスマン

1987年前後、インターネットなど影も形もない頃の話です。ロンドンのオカルト書物専門店より連絡が入りまして、「クロウリーの『春秋分点』1セット10冊が手に入ったが、興味があるなら10日以内に連絡をくれ、送料込みで300ポンド也」とのこと。ちょっと待て、10日以内というのは小生が手紙を受け取ってから10日以内か、向こうが手紙を出してから10日以内か、後者だとしたらあと2日しかないではないか。小生はその日のうちに中央郵便局からファクシミリを送るという方法でブツを確保したのあります。

 2ヶ月後に届いた『春秋分点』セットは、むろんのこと1909年刊行開始の初版ではありません。そんなものが300ポンドで手に入るわけがない。サミュエル・ワイザー社が1972年に出した復刻版なのですが、それとてもこの当時は大変な希書となっていて、小生などは雀躍したものであります。

 さてこのセットには以前の持ち主がいらして、いろいろと面白い書き込みを残しておられました。第1巻の見返しから見事なペンさばきでヘブル文字やシジルが飛び交い、興味の尽きないところです。


これが見返しに残るインスクリプション。ヘブル文字はどれも神名ですが、それを数値変換して魔方陣上に展開し、シジルを得ています。


さらにページをめくると中扉になり、THE EQUINOX という題字が登場します。ヘブル文字はやはり神名です。イエソドとマルクトのシジルがあり、題字下にはなにやらギリシャ文字らしきもの、さらに図案化された神名魔方陣が記されています。ほぼタリスマンといってよいでしょう。これを描いた人はかなり気合が入っています。



 第1巻の書き込みはこれだけですが、他の巻にはゲマトリアとおぼしき数字の羅列、タロット関連の意味群、あるいは神の分類といった面白いものが続きます。古書を入手する醍醐味ここにありと申せましょうか。

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