タロットに似たもの7 エンブレマータ

当サイトにて主張されるタロット起源説にあって、15世紀末から登場した印刷時祷書の果たした役割は大きいとされている。それまで豪華な手描きの遊具であったタロットが、木版や金属製版の登場によって大量生産されるようになり、一気に大衆化したのであるが、その際のデザインの流用元が印刷時祷書であった。そして16世紀半ば、印刷時祷書ブームが終わると、カード製造業者が目をつけた次なるターゲットがエンブレマータ、一般に「寓意画集」と訳されるジャンルであったと思われる。

 エンブレマータの典型的仕様としては、見開きの左頁に蔓草模様と寓意画と警句詩、右頁に解説文を配するというものがある。下は当博物館所蔵のエンブレマータ、ジル・コロゼの『エカトングラフィー』(1540)レプリカ。


 このレイアウトであれば寓意画と解説文を切り離すことで簡単に「犬棒かるた」が出来上がるのであり、そういった使用法をされたこともままあったであろう。以下は『エカトングラフィー』に見る各種寓意画である。


 そもそもタロットはゲームであり、賭博の小道具である。それが占いに用いられるようになったきっかけは定かではないが、印刷タロットの源流のひとつにエンブレマータがあったと仮定するなら、寓意画と警句詩と解説文を切り離して「犬棒カルタ」にする遊び方をカード占いの原型と見ることはさほど困難ではないであろう。


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