イライザ叔母の幽霊

ああわたしはかつては戯れる子供のように
快活であったというのに、いまでは悲しくも
賢くなってしまった。自慢させてもらうが
わたしは未婚のまま逝ったイライザ叔母の
幽霊を見たことがある。
嘆息しつつ告白するが
あの叔母を好きになったことなど一度もない。
何事にも目を光らせる
口やかましく痩せこけたわがイライザ叔母。

古びた教会堂の地下に
叔母の棺を横たえたとき
棺の蓋の不具合で、かの尊敬すべき
売れ残りを閉じ込めそこなったのではないか。
わたしには知りようがなかった。

叔母は口癖のように言っていた。
わたしがなにか不行跡をしでかせば
なにがあろうとも墓からよみがえって
とことん説教してやる、と。
当時のわたしはあざ笑いながら聞いていた。

そこでわたしは叔母の幽霊を呼び出そうと
いろいろ悪いことをやってみた。
遺言状を捏造し、
密造酒製造所を経営し、
従兄弟の首を絞めたりしたのだ。
しかし叔母は現れる風でもない。
おそらくあちら側から舞い戻ることはないのだと
わたしは考えていた。

しかし悲しいかな
クリスマスの日
(だれかの妹だったと思うが)
その娘がヤドリギの下に立つのが見えた。
その場でわたしはキスをしてやった。

すると青い光に包まれて
痩せ衰えたイライザ叔母が出現した。
わたしは心の底から悲鳴がでるほどに
叔母を驚かせてしまったのだ。

その夜以来、わたしは叔母にとりつかれ
へとへとの有様だ。
あの何事にも目を光らせる
口やかましい叔母が嘆きの言葉を並べつつ
散歩をやめようとしない。
あの陰鬱な道徳家をとめることは
わたしには一瞬たりともできないのだ。
わたしはイライザ叔母の幽霊に常時監視され、
輾転反側する日々を送っている。

          ―― J・W・ブロディーイネス



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