水の杯


 いかなるガラスの杯でもよい。
 水受け部分はクロッカスの花のような形状で、花弁が8枚必要である。
 小さなグラスで、縁が8つのカットになったものが望ましい。
 これら八花弁は明るい青色でなければならない。薄くても暗くてもいけない。
 また、明るいオレンジ色で縁取りを入れるべし。
 両色彩とも、明瞭かつ正確であること。
 花弁は塗ってもよし、色紙をグラスに貼りつけてもよい。
― 『黄金の夜明け魔術全書』下巻54p


 以上の指示により、偉大なる魔術結社「黄金の夜明け」団では水の杯が多数つくられ、そのうち数点は現存しているのであるが、はっきりいってその姿はしょぼい。とりわけイエイツが用いていたそれは、小型のコップに外側から花弁状の色紙を貼りつけただけである。

 やはりこの杯を理想的に作るとなれば、色ガラスを重ねた状態で吹き出し、それをカットするというのが常道であろう。もちろん、それが出来るのは本職のガラス職人であるから、元祖GDでは色紙やペイントでお茶を濁していたのである。

 下はCGで作ってみたマルチグラスの杯である。
この状態から神聖名を彫り込むには、ステンシル・マスキングを施してサンドブラストをかけるのが一番簡単であろう。



2014年7月3日付記

 上記の文章を記してから月日が流れたが、カットグラス製の水の杯はいまだ希少であり、業界では錫やアルミのダイカストが主流のようである。ミサ用の聖餐杯を流用するのはよい趣味とはいえない。とりあえず金属杯のCGも出しておくことにする。





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