全部で630円100円魔法

 そらこそご時世、諸事万端安上がりが一番ですわ。

 というわけで突如はじまる It's a cheap magic !
 最近はやりの100円ショップで揃える魔法の世界、いってみましょか。

 ご覧のように地球儀、方位磁石、呼び鈴、ガラス瓶、ロウソク、人形。

 うちの近所の100円ショップで買ってきました。全部で消費税込み630円也。


 賢明なる諸兄はもうおわかりでしょう。4方角の象徴、およびマスコットですな。

 まず磁石で正確な方位を出し、東に呼び鈴、南にロウソク、西にガラス瓶、北に地球儀を並べる。


西


 かくして簡易神殿が設定されるのですな。続いてこの神殿の守護者を任命する。お人形はそのためのもの。

 人形の選択は守護者の容姿に合わせるほうがよいのですな。すなわち簡易神殿をドラゴンに守護させると決めたなら、竜関係のお人形がよいわけで。

 今回は野山のニンフ系の守護者を想定しておりまして。で、100円ショップで売っていた人形のなかから、魔女系のワラ人形を用いることにしたのですわ。

 野山系ということですから、元素としては地、方角としては北。

 さて、これからが思案ですな。守護者を(1)創る (2)捕獲する (3)招待する、以上3種の方法が考えられるわけで、どれでいくか。

 まず(1)の創る。これは初心者にはかなり難しい。専門的にはテレズマ術式による人工元素霊の創造というのですな。

 (2)の捕獲する。これが捕まらないのですわ。それでも捕まえたいという人は『ムーンチャイルド』を参照のこと。

 というわけで、(3)の招待するが無難。とはいえ、不可視の存在を招待するとなれば、相応の危険も伴う。早い話、ろくでもないものを呼び寄せてしまう可能性も否定できない。せっかくの神殿にグニョグニョのベチャベチャがくだまいているようでは終わりですわい。

 清潔なる存在は清潔なる場所に宿るとかたく信じて毎日清掃をこころがけましょう。

 さて、守護者を招待するにあたっては、相手の名前もわからないようではお話にならない。というか、こちらで名前を決めてしまう。

 一応ルーンストーンがよいとされておりますな。この場合、北の方角に向かってルーンストーンをほうり、三個選んで名前を作る。作った名前を小さな紙に記して人形に縫い込むなり織りこむなりする。かくして神殿の守護者の仮寓のできあがり、ですわい。

 で、人形を北の方角に安置する。西のガラス瓶に水を入れる。南のロウソクに火をともす。東の鈴を鳴らす。北の地球儀をぐりぐり回す。

 各元素をしばらく活動させ、しかるのち火を消す。水を捨てる。鈴をしまう。地球儀をとめる。人形を別の場所にしまう(引き出し等、人目につかない場所)。

 ガラス瓶もロウソクも別々の場所にしまい、すべてを自分の視界から消してしまう。

 あとは夢待ち、ですな。



 この種の人形魔術は世界各地にさまざまな形で伝わっていて、とりわけドイツ系のものがおもしろい。いわゆる“ドールハウス”とその周辺を舞台とする、一見おままごと風の術式が多数伝わっておるのです。機会があれば紹介しましょう。

戻る