魔術ビギナーのためのO∴H∴特別講座3

(初級形式編)


 「形から入る」というのも重要な要素です。

 だいたい、いきなりカバラだ薔薇十字だと難しいことを教えるのも間違っている。元祖GDなど、まったくの初心者にいきなりド派手な参入儀式を施し、魔法名を与えて形を整えてますわ。初心者に魔術師としての自覚を持たせるには、法衣をまとわせ魔法名をつけるのが一番だったのですな。

 さて、運良く(あるいは運悪く)魔術結社に参入できた人間はよい。その結社のカリキュラムにしたがって魔術師になればよい。

 問題はそういう機会に恵まれない大多数の魔術師志願者です。嗚呼、彼等ハ如何ニシテ魔術師タラント試ミルノカ?

 この問題に対してはセルフ・イニシエーション(自己参入)という回答が用意されとりますが、まあ早い話、自分で適当に魔術師宣言してしまえということで。

 すなわち男性なら Frater(兄弟)、女性なら Soror(姉妹)。続いて自分の魔術修行の目標をラテン語で簡潔に表明したものを魔法名とする。ついでに自分のパーソナルナンバーを決める(通例三桁ないし四桁)。このパーソナルナンバーはつけないならつけないでよろしい。

 具体的にいうと、たとえば長尾豊の魔法名は Nemo 433 でしたな。これは普通、Fr. N.433 というふうに表記されます。

 とまあ、ここまでの内容はいろんな本に書いてある。それこそ長尾豊の『魔術は英語の家庭教師』にもあるとおり。

 今回はそれに加えて、オーダー名までつけてみよう。

 この道にはまったばかりの初心者でも、いずれはマスターとなって結社を開いてやるくらいの気概が必要でしょう。その未来の結社名をいまのうちに決めておくのですよ。そうすることでだんだんと魔術師としての体裁も整っていくのです。

 というわけで、まず結社名を考える。英語でいくなら、The Order of **** あるいは The **** Order という感じになるでしょう。この****の部分は各人が独自に決定するしかない。あまり日常的に使われないような言葉が望ましい。そして団名は部外者には決して漏らさないこと。対外的には常に頭文字省略を用いて応対する。

 頭文字省略の際は、定冠詞(the)や前置詞(of)はカットし、ピリオドのかわりに∴を用いる。すなわち The Order of Silver Sword ならO∴S∴S∴つーことで。

 一応、業界の常識として、既存の省略名と同一になってしまうものは避ける。早い話、日本の魔術業界でO∴H∴といえばうちらのことと決まっておるのであって、後発の人間が The Order of Hecateとか名乗ってO∴H∴という省略を使われると混乱するのですよ。そういう場合はThe Hecate Order にしてH∴O∴と省略していただきたいわけで。

 整理すると、初心者といえども魔術修行を志したなら、魔法名はおろか結社名まで勝手に決めて、「自分はO∴S∴S∴の Fr. S.I.A.A.なり」とやっちゃってかまわないということです。で、そのO∴S∴S∴がちゃんとした組織となるか、単なるペーパー・オーダーで終わるかは各人の修行次第ですわ。

 さらにいえば、ペーパー・オーダーといえどもレベルがあるわけです。O∴H∴は一日にしてならず。




 さて、魔法名も決まった。結社名も決めた。残るは外見ですわ。

 一応黒い法衣がいいとされとりますな。しかも手作り。ここはもう身の不運とあきらめて、黒い布地を買ってきて、慣れないお手手で針と糸を握りしめ、チクチクとやるしかないでしょう。そのうち、この種の手作業がおもしろくなり、くせになりますから。

 あ、この法衣も門外不出でして、魔術儀式の時以外は決して着用しないように。誰にも見せないように。

 あと、タロットとか水晶玉(風のガラス玉)とか、まあ一通り買い揃えてもよい。雰囲気、雰囲気。

 大事なことは、継続です。


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