射手図

 この件はイエイツの『自叙伝』にある。当該個所は『黄金の夜明け魔術全書』下巻解説に引用してあるが、この場にても若干紹介するのが親切というものであろう。同じ自叙伝から引くのも芸がないので、詩人の備忘録から一節を訳出する。


 テュリラにてわたしは月の力を喚起しようと決意した。この力こそわたしの霊感の主なる源泉であると信じたからである。わたしは九日に渡って宵の月喚起を行ったがたいした結果は得られなかった。しかし九日目の夜、いよいよ眠ろうとしたとき、まずケンタウロスを、次に星に矢を放とうとする素晴らしい裸女を見た。彼女は石像よろしく柱台のうえに立っていた。その血色のよい肌のまえでは人間の肌など不健康そのものと思われた。

 わたしはカバラ研究者であるウィン・ウェストコット博士をたずね、一連の象徴に関して質問してみた。博士は引出しから二枚の絵を取り出した。一枚は星を射る女性の図であり、もう一枚はケンタウロスの図だった。これらはわたしがいまだ到達していないカバラ位階の象徴であり、秘密のイメージだった。続いて博士が図示してくれたが、星と見えるものは実は小さな心臓であった。この心臓はティファレトであり、すなわち生命の木の中心であり、キリストの心臓でもある。女性射手とケンタウロスはそれぞれサメクの小径の高次天才と低次天才なのだと説明された。
Yeats : Memoir (London, PaperMac), pp101-103,


 興味深いのは、備忘録には evoke と記してある作業が、公刊物である『自叙伝』では invoke に変更されている点であろう。ともあれこの射手図版をCGにて想像再現してみる。

射手図
copyright Oujupah 2003


 Shadeによる3D画像をフォトショに流し込み、粗いパステル仕上げのフィルターをかけてみた。やや仰角のパース、円形グラッズの背景がうまくまとまったと思っている。イエイツの記述によれば、オリジナルの射手図は「どこかの下手な画家がシンボルのメモがわりにやっつけた代物」だったというから、このCGのほうが出来がよいかもしれない。


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