死霊術系妖精召喚

taken from Reginald Scot’s The Discoverie of Wichcraft, Booke XV. Chap.8


下準備

 まず三日間断食して神に祈るべし。あらゆる穢れから遠ざかるべし。

 最近の自殺者ないし進んで死に赴いた者の墓所に行く。あるいは絞首刑に処せられる人間をおさえ、肉体の死ののちに霊となって汝のもとに到来し、いついかなる時も汝の命令に服すという約束をとりつけよ。この一連の行動は同行者以外に見せてはならない。


予備召喚

 夜の十一時、当人が埋葬された場所に行き、全身全霊をもって死者を召喚せよ。同行者には左手に蝋燭、右手に水晶石を持たせよ。師匠は右手にハシバミの杖を持つ。杖には以下の神名を刻んでおく。Tetragramaton + Adonay + Agla + Craton 杖で地面を三回たたいて次の如く唱えよ。「○○よ、現れよ。○○よ、現れよ。○○よ、現れよ。われらの主イエス・キリストの復活の御名によりて、われ汝を呼びださん、霊○○よ。汝、わが言葉にしたがうべし。汝、最後の審判の日に救われんと信ずるごとく、今月今夜、まさにわが前に現れよ。さればわれ、わが魂の滅びをかけて汝に誓わん。汝、今宵わが前に現れ、水晶石に真実のヴィジョンを示し、わがもとにかの妖精シビリアを連れてくるならば、われは汝のために祈りを捧げん。復活の日に汝は主のみもとにあげられ、不滅の栄光にあずかるであろう。アーメン。

 師匠は墓の頭側に立つ。同行者は蝋燭と水晶石を手にしたまま呼び出しを行う。すると霊は水晶石のなかに十二歳ほどの美しい子供の姿で出現するであろう。霊が入ると石は熱を帯びる。されどなにも恐れるなかれ。霊は多くのまやかしを見せ、汝の作業を妨害するであろう。神を畏れよ、されど霊は恐れるなかれ。霊を縛る呪文は以下の如し。

 われ汝を呼び出さん、霊○○よ。われと汝と世界のすべてを創造したる生ける神、真の神、聖なる神の御力によりて汝を呼び出さん。

Tetragramaton + Adonay + Algramay + Saday + Sabaoth + Planaboth + Panthon + Craton + Neupmaton + Deus + Homo + Omnipotens + Sempiturnus + Ysus + Terra + Unigenitus + Salvator + Via + Via + Manus + Fons + Origo + Filius +

 神は人にものを考え語る力を与えたもう。その力によりてわれ汝を呼び出さん。ただちに水晶石のなかに現れよ。われとわが友に見える形にて現れよ。われ汝を呼び出さん、イエス・キリスト、アルファ・オメガ、最初にして最後なるものの御名において呼び出さん。イエスの御名のまえには天地冥すべてのものが頭を垂れん。われらの主イエス・キリストの御名は父なる神の栄光に包まれん。人の身の救われるは唯一イエスの御名によりてのみ。さればナザレのイエスの御名によりて、その誕生と復活と昇天によりて、その受難にまつわるすべてによりて、われ汝を呼び出さん。すみやかにこの水晶石のなかに現れよ。われとわが友の目に見える姿にて現れよ。われ汝を呼び出さん。十字架上にて流されし罪なき子羊イエス・キリストの血によりて呼び出さん。その血に御力を認める者はすべて救われん・・・


死霊への命令

 霊が水晶石のなかに現れたなら、以下の文言にて拘束せよ。
 われ汝を呼び出さん、霊○○よ。われとわが友のまえに汝は現れたり。われ汝に命ず。わが望みをかなえるまで水晶石より去るべからず。姿を変えるべからず。われ汝を呼び出し、全能の神の御名によりて縛るものなり。神はミカエルに命じてルシファーを天より追い落とし、喜びから苦痛へと転落させたり。汝その苦痛を恐れるならば、水晶石より出るべからず。霊○○よ、わが命あるまで姿を変ずるなかれ。われらの主イエス・キリストの御名によりて、あるいはこの書に記されたる呪文によりて汝を呼び出すときは、速やかに現れ、われとわが友に真実のヴィジョンを見せるべし。さればわがもとに妖精シビリアを連れてくるべし。われはシビリアとあらゆることを語りたし。フィアット、フィアット、フィアット、アーメン。

 以上をなしおえたなら、急いで場を移し、客間あるいは寝室にて白墨で円を描くべし。汝が入る円より4フィート離れた場所にシビリアが現れるための円を描くべし。この円には神名を記してはならない。聖なる事物を入れてもいけない。ただ円を描くべし。師匠は書物を、同行者は右手に水晶石を持って第一の円のなかに座し、石のなかに妖精が現れるのを待つべし。また師匠は羊皮紙に印形を記したものを胸元に納めおくべし。作業日時は新月の頃の木星の時刻、太陽と月が巨蟹宮、人馬宮、双魚宮のいずれかの宮にともに入るときとする。

 父なる神、子なるイエス・キリスト、そして聖霊の御名によりてわれ汝に命ず、霊○○よ。平安のうちに去り、すぐに妖精シビリアを円内に連れきたるべし。この書物に記されし呪文を七度読み上げるまえに連れきたるべし。わが命に従わざれば永遠の懲罰を覚悟すべし。わが意図を汲み、速やかに行き来たるべし。フィアット、フィアット、フィアット。アーメン。


妖精召喚

 前出の記章を胸元に着用し、記された言葉 + Sorthie + Sorthia + Sorthios + を唱えるべし。続いて以下の呼び出しを行う。

 われ汝を呼び出さん、シビリアよ、妖精の乙女よ。木星と金星の天使と記号の力により、また蒼穹に刻まれし印形により、また汝が心服したる妖精王と妖精女王の印によりて呼び出さん。われ汝を呼び出さん、シビリアよ、祝福されたる美しき乙女よ。主イエス・キリストの脇腹より流れ出し血の力によりて、イエスの死の際の天地晦冥によりて、イエスの母マリアの御名によりて、その名を唱えてはならぬテトラグラマトンの御力によりて汝を呼び出さん。わが前の円内に純白の輝く衣をまとう美しき女性の姿にて現れよ。速やかに現れ、わが意にかなうべし。われは汝をわが祝福された乙女となし、汝と肉の交わりをなさんと欲する者なり。されば急ぎ来たりて現れるべし。

 シビリアが来なければ来るまで呼び出しを続けよ。シビリアが現れたなら、釣り香炉を持ち、乳香にて薫煙せよ。しかる後、以下の文言にて拘束せよ。
 われ汝を呼び出さん、シビリアよ。父なる神、子なるイエス、神なる聖霊の三位一体、さらに母なるマリアの御名と御力によりて、また天上の諸天使と諸聖人の御名によりてわれ汝に命ず。われが命ずるまで姿を変えるなかれ、円より去るなかれ。汝が心服したる妖精王と妖精女王の印によりて呼び出さん。われ汝を呼び出さん、シビリアよ、祝福されたる美しき乙女よ。主イエス・キリストの脇腹より流れ出し血の力によりて、イエスの死の際の天地晦冥によりて、イエスの母マリアの御名によりて、その名を唱えてはならぬテトラグラマトンの御力によりて汝に命ず。わが意図を汲み、わが命に服すべし。フィアット、フィアット、フィアット、アーメン。


解説


 レジナルド・スコットの『魔法暴露』(1584)に紹介されている手の込んだ妖精召喚である。まず死刑囚と交渉して死後に術者のもとを訪問することを約束させ、その死霊を通じて妖精乙女シビリアを呼び寄せるという算段である。
 
 スコットは魔術師たちの手口を暴くという観点で記述しており、いわく「七十二の悪魔を自在に呼び出せると豪語する魔術師が、ぱっとしない惨めな人生を送ったあげくに絞首台送りになる」と嘲笑する。ここに紹介されるシビリア召喚も、「最近考案された新たな術であり、馬鹿が一歩一歩だまされていく様子を描いている」とする。

 全体、この妖精召喚は手の込んだ売春ないし美人局ではないかと思われる。



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