アルカナIX

文字 Thela (TH) -- 数字 9

ヴェイルに覆われたランプ : 深慮


 TH−9は神界にあっては絶対の叡智をあらわす。知識界にあっては深慮すなわち意志の支配者をあらわす。物理界にあっては慎重、行動指針をあらわす。

 アルカナIXは杖をつき、外套にて半分隠したランプを掲げる老人の姿であらわされる。この老人は実生活で身につけた経験の擬人化である。輝くランプは過去、現在、未来を照らす精神の光をあらわす。その光を半分覆い隠す外套は思慮分別をあらわす。杖は目的を明かさないことで人間が得られる支援を象徴する。

 大地の息子よ、心に刻むがよい。深慮は賢者の甲冑なり。慎重によって暗礁も陥穽も回避できるし、裏切りもまえもって察知できるのだ。深慮をあらゆる行動の指針とせよ。いかに瑣末な事柄であっても例外ではない。一事が万事、重要である。世界の支配者を運ぶ戦車も小石ひとつで転覆しよう。弁舌が銀ならば沈黙が黄金であることを覚えよ。

‐‐ ポール・クリスチャン 『魔術の歴史と実践』(1871)

参考


エリファス・レヴィ 「杖をつき、ランプをかかげ、全身を衣につつむ賢者。称号は隠者ないしカプチン、その東洋風外套の頭巾ゆえなり。しかしかれの真の名前は深慮である。かくしてクール・ド・ジェブランとエッティラが不完全として異を唱えた枢要徳の不備が補完される」-- 『高等魔術の教理と儀式』 (1855)


パピュス 「杖をついて歩く老人。灯りの入ったランプを掲げている。ランプは老人を包む大きな外套によって半分隠されている」 -- 『ボヘミアンのタロット』 (1889)


ウェストコット 「第九のトランプは隠者と名付けられている。外套に身を包み杖をつき、ランプを掲げる老人の姿であらわされる」 -- 『サンクタム・レグナム』 (1896)


ウェイト 「このカードにおける伝統的デザインとの差異は唯一、ランプが外套によって半分隠されていないところである。この人物は日の老いたる者と世の光という観念を混合したものといえる。すでに述べたように、このカードは到達のカードであり、さらに敷衍するならば、高所にて目印としての光を掲げていると見なしてよい」 -- 『タロット図解』 (1911)


解説 : 隠者のカードはデザイン的なバリエーションが少ない。パピュスの『ボヘミアン』にあるイラストでは隠者の足元に蛇がいる。作画担当のウィルトが後年記したところによると、この蛇は「個人的欲望のあらわれ」であるという。




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