アルカナVII

文字 Zain (Z) -- 数字 7

オシリスの戦車 : 勝利


 Z−7は神界にあっては七つ一組すなわち《自然》に対する《霊》の支配をあらわす。知識界にあっては司祭職と帝国をあらわす。物理界にあっては人間の知性と努力に対して服従する元素と諸力をあらわす。

 アルカナVIIは四角い戦車の姿であらわされる。四本柱で支えられる星模様の天蓋を有する戦車である。セプターと剣を持つ武装した征服者が乗っている。五箇所に三つのペンタグラムがついた黄金の鉢金をかぶっている。四角い馬車は万難を排した意志によって達成された作業を象徴する。星模様の天蓋を支える四本柱はセプターと剣の主によって征服された四元素をあらわす。戦車前面の区画には有翼球体が描かれ、すなわち無限の時空における人間力の無限昂揚を象徴している。征服者の黄金冠は、あらゆる《偶発》のアルカナを照らす知的啓発の所有をあらわす。五箇所に取りつけられた装飾用の三つ星は精神と叡智によって均衡する力を象徴する。胸板には三つの四角が刻まれている。この四角は判断、意志、行動の正しさを象徴する。この三者が正確であればこそ胸板にあらわれる力が与えられるのである。掲げられた剣は勝利のしるしである。セプターの先端には霊を象徴する三角形、物質を象徴する四角形、そして永遠を象徴する円がとりつけられており、これは物質に対する精神の恒久的支配をあらわす。戦車は黒と白のスフィンクス二頭に牽かれている。白のスフィンクスは善を、黒のスフィンクスは悪を象徴する。かたや征服され、かたや克服され、両者ともに試練に打ち勝った術士のしもべとなっている。

 大地の息子よ、心に刻むがよい。世の帝国は高貴なる精神すなわち生命の密儀を照らし出す光の持ち主に属するのだ。不断に正義をなすことで強化された勇気とともに未来を目指すなら、困難を克服することによってそなたは敵を打倒し、満願を達成するであろう。

‐‐ ポール・クリスチャン 『魔術の歴史と実践』(1871)

参考


エリファス・レヴィ 「立方体の戦車、4本の柱、蒼穹かつ星模様の天蓋。三つの輝くペンタグラムをあしらった冠をいただく勝利者。胸元には三つの四角が重なり合い、肩には君主供犠者としてのウリムとツミムがある。後者はゲドラーとゲブラーの位置にある二つの三日月であらわされる。勝利者の手には球体と四角と三角をいただくセプターがある。態度は誇らしげかつ冷静である。下半身がつながった2頭ないし双頭のスフィンクスが戦車につながれている。牽引する方向は別々だが顔は同じ方向を向いている。スフィンクスはそれぞれ白と黒である。戦車の前面にはインドのリンガムがあり、そのうえにエジプトの飛翔球がある」-- 『高等魔術の教理と儀式』 (1855)


パピュス 「黄金に輝く三つのペンタグラムをつけたコロネットをかぶる征服者が、四本柱にて星空模様の天蓋を支える四角い戦車で行進する。征服者は甲冑の胸当てに三つの直角模様を有する。肩には君主司祭のウリムとツミムがある。両者は左右の三日月にてあらわされる。手には球、四角、三角をいただくセプターを持つ。戦車前面の区画にはインドのリンガム、その上にエジプトの飛翔球がある」 -- 『ボヘミアンのタロット』 (1889)


ウェストコット 下記解説参照


ウェイト 「抜き身の剣を携え、屹立する王侯の如き人物というのがおおざっぱな伝統的姿である。勝利の英雄の両肩にはウリムとツミムがあるとされる。かれは捕虜をも魅了してきた。かれはあらゆる次元での征服者である。すなわち精神、学問、進歩、ある種の参入試練を征服してきたのだ。かくのごとくしてかれはスフィンクスに返答してきたのであり、この点に関しては私もレヴィの逸脱に同意するにやぶさかではない。スフィンクスはかれの戦車を牽引するようになった。かれはなにをさておいても精神における勝利者である。」 -- 『タロット図解』 (1911)



解説 : エリファス・レヴィは『高等魔術の教理と儀式』に《戦車》の具体的イラストを収録しているため、その後のレヴィ系タロットの戦車描写にはヴァリエーションがあってはならないはずだが、クリスチャンにおいてすでに大いなる差異が生じている。すなわち征服者の持ち物の問題である。レヴィのイラストにはセプターしか描かれていないが、クリスチャンはさらに剣を持たせている。これがクリスチャンの独創かというと、そうとも言いきれない部分がある。

 ウェストコットの『サンクタム・レグナム』は、レヴィの弟子スペダリエリ男爵がアンナ・キングスフォードに贈呈したレヴィ文書を英訳したものである。この文書の《戦車》の冒頭にいわく

「ヘルメスの戦車は白と黒のスフィンクスにつながれている。この象徴的獣は新参者に謎を問い掛ける。白スフィンクスの言葉はヤッキンである。黒スフィンクスの言葉はボアズである。前者は愛を意味する。後者は力を意味する。サマエルが白スフィンクスを導き、アナエルが黒スフィンクスを導く。なぜならば、引力は対立によって生じるからである。戦車に座すヘルメスは鋼の剣の切っ先にて黒スフィンクスに触れ、黄金のセプターにて白スフィンクスに触れる」

 かくの如き前説ののち、文書は魔術剣と魔術棒の作製と聖別を解説していくのである。この描写はクリスチャンの描写と相通ずる部分が多く、おそらくクリスチャンがレヴィから直接得たタロット情報と同質のものであったと思われる。この点、レヴィと直接面識がないパピュスは『高等魔術の教理と儀式』を引き写すしかしかなかったのではないか(パピュスは『ボヘミアン』を発表した時点でまだ二十四歳という若さである)。

 以上の状況をよく知るウェイトは、戦車の勝利者の持ち物に詳しく言及することを避けたのであろう。

 なお、冠の星の数に関する差異は不詳。作画上はペンタグラム三個が簡単かつ常識的と思われる。ライダー版では八芒星+形状不明となっている。




↑レヴィが描いた《戦車》




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