アルカナVI

文字 Ur (U,V) -- 数字 6

二つの道 : 試練


 U,V−6は神界にあっては善悪の知識をあらわす。知識界にあっては必要と自由のバランスをあらわす。物理界にあっては自然の諸力の対立、因果の連鎖をあらわす。

 アルカナVIは十字路にたたずむ男性の姿であらわされる。視線は地面に固定され両腕は胸元で組まれている。二人の女性が左右に立ち、それぞれ男性の肩に手をかけて、自分の方角の道を指差している。右の女性は額に黄金の鉢金を巻いており、美徳を擬人化した存在である。左の女性は葡萄の葉の冠をかぶっており、悪徳の誘惑をあらわす。上空には輝く光輪に包まれる《正義》のゲニウスが弓を引き、悪徳に懲罰の矢を射ようとしている。場面全体が情熱と良心の闘争を表現している。

 大地の息子よ、心に刻むがよい。常人にとって悪徳は美徳よりも大いなる魅力を有するものなり。もしアルカナVIがそなたのホロスコープにあらわれたなら、決意を保つようこころがけよ。幸福への道が塞がれるであろう。反対勢力がそなたのまわりにただようであろう。そなたの意思は対立する二者のあいだで揺れるであろう。なにごとにせよ、決断せざるは誤った決断よりも致命的なり。進むにせよ退くにせよ、決してためらってはならない。花輪を断つは鉄鎖を断つよりも困難であると知れ。

‐‐ ポール・クリスチャン 『魔術の歴史と実践』(1871)

参考


エリファス・レヴィ 「神聖文字、美徳と悪徳のあいだに立つ男性。頭上には真理の太陽があり、この太陽のなかに弓をひいて矢で悪徳を脅す《愛》がいる」-- 『高等魔術の教理と儀式』 (1855)


パピュス 「髭のない無帽の青年が分かれ道の角に佇む。腕を胸のうえで交差させて組んでいる。二人の女性が左右に立ち、それぞれ男性の肩に手をかけて、自分の方角の道を指差している。右の女性は頭に金の輪wかざり、左の女性は乱れた髪に葡萄葉の冠をかぶっている。《正義の霊》が光輪にかこまれてかれらの頭上に浮かぶ。弓を引き、懲罰の矢で擬人化された悪徳を狙っている」 -- 『ボヘミアンのタロット』 (1889)


ウェストコット 「6の数を有するタロット・トランプはフランスでは L'Amoureux 、英語では普通 The Lovers 恋人たちと呼ばれる。意匠としては頭上に太陽、弓矢で武装するキューピッドがいる。下には美徳と悪徳をあらわす二婦人にはさまれる男性がいる」 -- 『サンクタム・レグナム』 (1896)


ウェイト 「天頂に太陽が輝き、その下に大いなる有翼の姿が両腕を広げ、影響力を流出させている。前方では地上の楽園を占有していた頃のアダムとイヴの如き人物が二人描かれている。男性の背後には十二の実を結ぶ生命の樹が、女性の背後には善悪の知識の樹がある。後者には蛇が巻きついている」 -- 『タロット図解』 (1911)



解説 : パピュスの「恋人たち」描写はクリスチャンのそれとほぼ同一。またクリスチャンが語る「神界にあっては善悪の知識」という部分がライダー版の「恋人たち」に反映している。



戻る