アルカナV

文字 Eni (E) -- 数字 5

アルカナの主 : 秘められた霊的衝動


 E−5は神界にあっては宇宙の法をあらわす。この法は物質の統一における“存在”の無限の顕現を統括する。知識界にあっては宗教すなわち絶対と相対、有限と無限の関係をあらわす。物理界にあっては、宇宙の法という閉じられた円環のなかにあって活動の自由を許される人間が直面する試練をあらわす。

 アルカナVはハイエロファントすなわち聖なる密儀の師の姿であらわされる。この隠秘教義の君主は聖域の二柱の間に座す。かれは三本横木の十字架を杖とし、右手の人差し指で胸元に沈黙の合図をなす。足元には二人の人間の頭部が突出している。一人は赤い衣、もう一人は黒衣である。ハイエロファントは善意と良心のゲニウスをあらわす。かれの所作が瞑想を招く。情熱の沈黙のうちに天の声を聴け、肉体の本能を聴けと招く。右にある柱は神の法をあらわす。左の柱は従う、従わないの自由をあらわす。三重十字は三界に浸透しあらゆる生命の顕現を生む神の紋章である。赤衣、黒衣の人物は光と闇の精霊を表す。ともにアルカナの主には服従する。

 大地の息子よ、心に刻むがよい。ある人が幸せか不幸かを判断するまえに、その人の意思がいかなる道に用いられたかを知る必要がある。人は自らの作業にそって人生を創造するからである。そなたの右手に善霊あり、そなたの左手に悪霊あり。そのものたちの声を聴くはそなたの良心のみなり。瞑想せよ、さればかれらの声が聞こえるであろう。

‐‐ ポール・クリスチャン『魔術の歴史と実践』(1871)

参考


エリファス・レヴィ 「神聖文字、教皇、あるいは大神官。最近のタロットではユピテルの姿に交換されている。ヘルメスとソロモンの二柱の間に座す大神官が秘教の合図をなし、三重横木と三角形からなる十字架に身を預けている。二人の下級神父がかれのまえにひざまづく。」-- 『高等魔術の教理と儀式』 (1855)


パピュス 「イシスの密儀の参入者が聖域に二柱の間に座す。三重十字に身を預け、左手で秘教の合図をなす。参入者はティアラをかぶる。二人の戴冠した人物があしもとにひざまづく。一人は赤衣、ひとりは黒衣である。」 -- 『ボヘミアンのタロット』 (1889)


ウェストコット 「第五のタロットトランプは教皇、ハイエロファント、あるはユピテルと称される。その姿は戴冠した支配者であり、左手に三重横木十字を持つ。二柱の間に座す。右手で行うのは隠秘叡智の合図であり、通常の教皇の祝福ではない」 -- 『サンクタム・レグナム』 (1896)


ウェイト 「かれは三重冠をかぶり、二柱の間に座す。しかし柱は女司祭が守る神殿の柱ではない。左手には三重十字を先端とするセプターを持ち、右手で有名な聖職の合図をなす。この合図は秘教の合図と称されており、教義の顕密の区別する足元には交差する鍵があり、アルバ衣姿の二人の司祭がひざまづく」 -- 『タロット図解』 (1911)



解説 : 教皇の足元にいる二人を善と悪の霊とする解釈はクリスチャンの独創のようである。




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