アルカナII

文字 Beinthin(B) -- 数字 2

秘められし聖域への扉 : 知識


B-2は神界にあっては、現在・過去・未来というあらゆる顕現の三位相を包括する絶対的存在の意識を表す。知識界にあっては《一》の反映たる《二》、すなわち知識、すなわち可視と不可視の知覚を表す。物質界にあっては《女性》、すなわち《男》を生む子宮であり、男と結合し、同様の運命をたどる。

アルカナIIはイシスの神殿の戸口にて、二柱の間に座す女性として表される。彼女の右手の柱は赤色であり、魂の純粋を表す。左手の柱は黒色であり、夜の混沌、物質の縛めにとらわれた魂の不純を表す。女性は三日月を頂くティアラを被り、ヴェイルで顔を覆っている。胸元には太陽を表す十字をつけ、膝の上には半開きの書物を置く。書物はマントによって半分隠されている。この姿はイシスの聖域の戸口にて参入者を待つ隠秘科学を擬人化している。参入者に自然の秘密をまさに伝えんとしているのである。太陽の十字は霊による物質の受精を表す。さらに太陽十字は無限なるものの象徴であり、神より発した知識はその源泉と同様に無限であるという事実を表現している。ティアラを包みつつ顔を覆うヴェイルは、世俗の好奇心から身を隠す真理を表す。マントによって半分覆い隠された書物が象徴するところは−−密儀は沈黙の瞑想をなす孤高の賢者にのみその姿を顕かす。

 ホロスコープ中にアルカナ2が出現したなら、決然と未来へ通ずる扉を叩くがよい。扉は開かれよう。されどそなたが進むことになる道を長期間、慎重に学ばれたし。顔を正義の太陽へと向けよ、されば真実を見分けるための知識が得られるであろう。そなたの目的をなんぴとにも口外することなかれ。口外せねば他人に非難されることもない。 

‐‐ ポール・クリスチャン『魔術の歴史と実践』(1871)

参考


エリファス・レヴィ 「ヘルメスの神聖文字作品であるタロットあるいはトートの書において、二重性はイシスの角に表されている。イシスは顔をヴェイルで覆い、膝の上にはマントで一部を隠した書物を置いている」 -- 『高等魔術の教理と儀式』 (1855)


パピュス 「その女性はあらゆる権威と説得力を象徴するアトリビュートに飾られる。そしてイシス神殿の入り口、二本の柱の間に配される。聖なる住居、聖なる受容という観念。二柱は魔術師の腕と同様に陰陽を表す。彼女は三日月を戴くティアラをかぶり、透明なヴェイルに包まれ、顔を隠している。胸元には太陽十字があり、膝の上には開かれた書物があるが、マントで半分覆い隠されている」 -- 『ボヘミアンのタロット』 (1889)


ウェストコット 「第二のタロット・トランプには座した女性が描かれる。ティアラをかぶり、書物を持つ。その書物はマントで一部分隠されている。顔の周囲にはヴェイルがあり、古いカードにはイシスの角を頭飾りとして描いているものもある」 -- 『サンクタム・レグナム』 (1896)


ウェイト 「彼女は足元に三日月を置き、頭には中央に球体を配する有角ダイアデムをかぶる。胸元には大きな太陽十字を着用する。手の中の巻物にはToraという言葉が記されており、大いなる法、秘密の法、そして“言葉”が持つ第二の意味をあらわす。巻物は一部分、マントに隠されており、なにかが暗示されている、なにかが語られていることを表している。白柱と黒柱の二本−−JとB−−に挟まれて座しており、背後には神殿のヴェイルがかけられている。ヴェイルには椰子と石榴が刺繍されている。衣は流れる如き紗であり、マントは光、きらめく放射を示している。彼女はイシスの聖域の入り口にいる“隠秘科学”と称されてきたが、実のところは秘密教会であり、神と人の“家”である」 -- 『タロット図解』 (1911)



解説 : ライダー版の女司祭がクリスチャンの影響下にあることは明白だが、ウェイトとしてはその事実を認めたくないとみえ、わざわざ「実のところは秘密教会である」といった文言を付加している。なお、柱の色はクリスチャンで黒と赤、ウェイトで白と黒。参考までに、オズワルト・ウィルトは『中世のタロット』(1927)において柱の色を赤と青に設定している。パピュスの『ボヘミアン』にあるタロット画はウィルトの絵筆になるものだが、絵としては1927年版のほうが出来がよい。



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