アルカナXVII

文字 Pilon (F,P) -- 数字 80

術士の星 : 希望


 F,P−80は神界にあっては不滅をあらわす。知識界にあっては霊を啓発する内なる光をあらわす。物理界にあっては希望をあらわす。

 アルカナXVIIは七つの星に囲まれ八本の光条を放つ輝星の姿であらわされる。星の下では裸女が金と銀のゴブレットから生命の水を不毛の大地に注いでいる。女の横では薔薇の花に蝶がとまっている。この女は希望の紋章であり、われらの悲しむべき時代に希望の露をふりそそぐ。その裸体は、すべてが奪われてもなお希望が残ることのあらわれである。頭上の八光条の星は、黙示録の七つの封印すなわち七惑星すなわち他の七つの星とともに宿命を象徴する。蝶は死の向こうにある復活のしるしである。

 大地の息子よ、心に刻むがよい。希望は信仰の姉妹なり。激情と過ちを捨て、真の知識の神秘を学ぶがよい。されば神秘の鍵はそなたに与えられらるであろう。さすれば神聖なる光が秘められし聖域より輝き、未来の闇をけちらして幸福への道を明らかにするであろう。人生においてなにが起きようとも希望の花を手折ってはならない。さればそなたは信仰の果実を受け取るであろう。

‐‐ ポール・クリスチャン 『魔術の歴史と実践』(1871)

参考


エリファス・レヴィ 「サタンの聖堂の崩落をあらわす16番ののち、われわれは17番にすばらしい紋章を見出す。若き不滅の乙女が裸体で金銀二つの水差しから不毛の大地に世界生命の水を注ぐ。すぐそばの花咲く潅木には魂の蝶が羽を休める。頭上では八光条の星が7つの星に囲まれて輝いている」-- 『高等魔術の教理と儀式』 (1855)


パピュス 「裸女が二つの杯から世界生命の水をそそぐ。乙女は7つの星を冠とする。そのただなかにひときわ大きな星が輝く。そばでは鴇(ときに蝶)が花(あるいは潅木)のうえにとまる」 -- 『ボヘミアンのタロット』 (1889)


ウェストコット 「第17のタロット・トランプは星と称される。全裸の女性が海と陸地にまたがってひざまづき、各々の手にもつ瓶から水を注いでいる。ふたつの流れは足元で川を形成する。頭上には八本の光条を持つ星があり、小さな7つの星に囲まれている。女の右側には潅木が茂っており、そのうえにヘルメスの鳥がとまっている」 -- 『サンクタム・レグナム』 (1896)


ウェイト 「八本の光条を持つ大きな輝星が七つの、やはり八本の光条を持つ星に囲まれる。前景の女性は全裸である。左膝は陸上にあるが、右足は水中にある。大きな瓶から生命の水を注ぎ、陸海を潤している。背後の小高い土地に潅木があり、鳥がとまっている」 -- 『タロット図解』 (1911)



解説 : 西洋のイコノグラフィーでは、水瓶から水を注ぐ人物像は基本的に川をあらわす。この札は天の川を表現していると見なすのが一番素直であろう。ウェストコットのいう「ヘルメスの鳥」とはイビスすなわち鴇のこと。これを蝶とするのはフランス流であり、後年のウィルト版でも蝶になっている。おもしろいのはクリスチャンの影響下にある各種エジプシャン・タロットの「星」が蝶を採用する点であろう。



戻る