アルカナX

文字 Ioithi (I,J,Y) -- 数字 10

スフィンクス : 運命


 I,J,Y−−10は神界にあっては万物に生命を与える積極原理をあらわす。知識界にあっては支配的権威をあらわす。物理界にあっては幸運あるいは凶運をあらわす。

 アルカナXは二柱で心棒を支える車輪の姿であらわされる。右側から神霊であるヘルマニュビスが車輪の頂上へ登ろうと苦闘している。左側では悪の霊であるテュフォンが滑り落ちている。車輪の頂上ではスフィンクスがバランスをとりつつ獅子手に剣を持っている。それは右も左も平気で撃つ《宿命》の擬人化である。宿命が回る車輪の向きにより、もっとも卑しき者が興隆し、もっとも気高き者が凋落する。

 大地の息子よ、心に刻むがよい。能力は意志に左右される。意志するところを達成しようというのであれば、そなたは敢然たらねばならぬ。そして敢然たろうと思えば、実行の直前まで沈黙を守らねばならない。知識と力を得るためには、意志は辛抱を知る必要がある。最高を達成して、なおそれを維持しようと望むのであれば、まず最低のなんたるかを測っておく必要があろう。

‐‐ ポール・クリスチャン 『魔術の歴史と実践』(1871)

参考


エリファス・レヴィ 「運命の輪すなわちエゼキエルの宇宙発生論的。右から登るヘルマニュビスと左へ下るテュフォン、そして中央で均衡を保つスフィンクスが獅子手で剣を持つ」-- 『高等魔術の教理と儀式』 (1855)


パピュス 「軸受けにて支えられる運命の輪。善のゲニウスであるアヌビスが右から登る。悪のゲニウスであるテュフォンが左へと下る。スフィンクスが車輪の上でバランスを取りつつ獅子手に剣を持つ」 -- 『ボヘミアンのタロット』 (1889)


ウェストコット 「第十のトランプは運命の輪と名付けられる。直立する二本の梁に支えられる車輪として描かれる。一方にヘルマニュビスが立ち、もう一方にテュフォンが立つ。車輪の上ではスフィンクスが剣を顎で保持している」 -- 『サンクタム・レグナム』 (1896)


ウェイト 「この象徴においてわたしはふたたびレヴィの再現図に従っている。かれは若干の変更を行っている。エジプトの象徴を用いるのは以前に述べたように正統な作業であるが、これが必ずしも起源に関する理論とは関係がないことを明記する必要もあろう。テュフォンは蛇形にてあらわしている。」 -- 『タロット図解』 (1911)


解説 : ウェストコットのみスフィンクスの剣を jaws のあいだに保持すると記している。すなわち剣を口でくわえる姿なのであろうが、具体例はかつて見たことがない。claws の誤記である可能性も否定できないであろう。




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