アルカナ0

文字 Sichen (S) -- 数字 300

鰐 : 贖罪


 S−300はすべてのあやまちの結果としての懲罰をあらわす。ぱんぱんに膨らんだ頭陀袋を持つ盲人が壊れたオベリスクにまさに衝突せんとする図が描かれる。オベリスクの上には鰐が乗っており、おおきな口をあけている。この盲人は自ら物欲の奴隷となった人間の象徴である。かれの頭陀袋は過ちと錯誤で膨らんでいる。壊れたオベリスクはかれの作業の残骸をあらわす。鰐は運命および避けられない贖罪の紋章である。

‐‐ ポール・クリスチャン 『魔術の歴史と実践』(1871)

参考


エリファス・レヴィ 「愚者。愚者の格好であてもなくさまよう男。背負った頭陀袋にはまちがいなく愚行と悪徳がつまっている。乱れた服装のために恥部があらわになっている。虎にかみつかれており、逃げるすべも身を守るすべもわからない」-- 『高等魔術の教理と儀式』 (1855)


パピュス 「無頓着な様子の男が道化帽をかぶり、破れた服を着て、肩に荷物を担ぎ、静かにわが道をゆく。足にかみついている犬にも注意を払わない。自分の行き先も見ていないので、断崖に向かっている。そこでは鰐が男を貪り食おうと待ち構えている」 -- 『ボヘミアンのタロット』 (1889)


ウェストコット 「肩に荷を担いで道をゆく旅人。右手に杖をつく。背後から虎に襲われている。虎は旅人の衣服にしっかりと爪を掛けているが、旅人は襲撃に気づく風でもない表情」 -- 『サンクタム・レグナム』 (1896)


ウェイト 「まるで大地もその拘束もかれを抑える力を持っていないかのようだ。若者は豪奢な服に身を包み、世界最高峰の断崖のきわにて静止している。眼前の青い遥景を−−それも眼下の眺望ではなく、空の広さを見渡している。いざ踏み出さんとの思いが見てとれるが、この瞬間、かれは静止している。かれの犬はとびはねている」 -- 『タロット図解』 (1911)


解説 : そもそも欧州のどこの街道で旅人が虎に襲われるのか詳しく伺いたいものだが、まあいい。転写に転写を重ねた結果、犬が虎に化けたと考えるのが自然であろう。クリスチャンの鰐とオベリスクは独創であり、パピュスによって引き継がれた。後年のウィルト版では虎が山猫になっている。




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